第25話 責任(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
魔術が“戻った”という噂は、
ゼルが街を離れる前に、すでに広がり始めていた。
正確には、
魔術そのものが復活したわけではない。
基準が存在する範囲でのみ、
世界が再び選択を許した――
それだけだ。
だが、人々にとっては十分だった。
「あの人が来ると、魔術が使える」
「触れていないのに、起きた」
「奇跡だ」
言葉は、
あっという間に“意味”を歪める。
ゼルは歩く。
ノクスは少し距離を取って並ぶ。
「影響範囲が、
意図せず拡大しています」
「俺は、
何もしてない」
「ええ。
それが問題です」
基準の関与は、
能動ではない。
だが、現場に立った瞬間、責任が発生する。
それは、
英雄の責任ではない。
――基準としての責任だ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第25話 責任(2)へ続く




