第24話 関与(3)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
ゼルは、男の亡骸のそばに立った。
詠唱はしない。
魔力も流さない。
ただ、
“基準として、そこに在る”。
次の瞬間、
周囲の空気が変わった。
治癒魔術が発動したわけではない。
だが――
他者の詠唱が、通った。
誰かの小さな回復魔術が、
初めて“結果”を生んだ。
「……使えた?」
「魔術が……戻った?」
ざわめきが広がる。
ノクスは、静かに記録する。
《基準:関与開始》
《影響範囲:局所》
《魔術成立率:回復》
ゼルは、理解した。
基準は、
世界を救う力ではない。
世界が、再び選択できる状態を作る存在だ。
だが、それは同時に――
常に現場に立ち続けるという意味でもある。
「……これが、関与か」
ノクスが答える。
「ええ。
あなたはもう、
“動かない”ことを選べません」
街の空で、
止まっていた雲が、
ゆっくりと流れ始めた。
世界は、再び動き出す。
そして――
基準は、
その中心に立ってしまった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第25話 責任(1)へ続く




