第21話 学院の終わり(3)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
夕刻、全生徒に集合命令が出た。
大講堂。
壇上には教師陣が並び、
そのさらに前に観測局の一団が立つ。
セラフィルが告げる。
「学院は、当面閉鎖します」
ざわめきが走る。
だが、驚きは少ない。
皆、どこかで予感していた。
「本学院は、教育機関である以前に、
“観測施設”としての役割を持っていました」
教師たちが、目を逸らす。
生徒たちの中に、理解が広がる。
――だから、測った。
――だから、隔離した。
――だから、代替を作った。
学ぶためではなく、
分類するために。
「そして昨夜、
基準点が確定した」
セラフィルの視線が、講堂の奥――
隔離区域の扉へ向く。
ゼル・オルディアは、姿を見せていない。
だが、そこにいるだけで空気が変わる。
「彼は本日中に、観測局へ移送されます」
一瞬、時間が止まる。
リリアは、息を呑んだ。
エリシアは、立ち上がりかけて踏みとどまる。
アーヴェルは、静かに歯を噛む。
そして、生徒たちは理解する。
学院の終わりとは、
建物が崩れることではない。
“権限が移る”ことだ。
ここはもう、彼らの世界ではない。
ノクスが、最後に一言だけ付け加える。
「学院は終わります。
ただし――物語は終わりません」
その言葉は、
脅しでも慰めでもない。
宣言だった。
学院が終わる。
世界が始まる。
そしてゼルは、
世界の中心に押し出される。
彼が望んだかどうかとは無関係に。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第22話 移送(1)へ続く




