第21話 学院の終わり(2)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
正午前、学院の正門前がざわついた。
馬車でも、貴族の護衛でもない。
魔術師団でもない。
灰色の外套をまとった一団が、
静かに門をくぐる。
観測局の紋章。
学院のどの権限よりも上位に位置する印。
教師たちは整列し、頭を下げた。
だがその動きは、礼ではない。
服従だ。
先頭に立つのは、昨夜の人物――執行官。
その後ろに、別の人物がいた。
白い手袋。
薄い金縁の眼鏡。
微笑を貼り付けたまま、視線だけが冷たい男。
「監査官」
名乗りとともに、空気が変わる。
彼はノクスとは違う匂いを持っていた。
ノクスが“現象”を見るのに対し、
セラフィルは“責任”を見る。
「本日より、学院は観測局の臨時管理下に置きます」
柔らかな声。
だが内容は硬い。
「関係者の行動記録を提出。
隔離措置の決裁経路を提示。
同調術式の設計者と承認者を列挙」
教師たちの顔色が変わる。
誰もが知っている。
提出すれば、終わる。
だが提出しなければ、
もっと終わる。
アーヴェル・ヴァルディシアは、
遠巻きにその様子を見ていた。
自分の“正しさ”が、
世界の仕組みの前では
ただの一手だったことを理解し始めている。
エリシアは、拳を握った。
守ろうとしてきたものが、
守る価値のある形をしていなかった。
その事実が、
胸を刺していた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第21話 学院の終わり(3)へ続く




