第21話 学院の終わり(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
事故の翌朝、学院は“静かすぎる”ほど整っていた。
瓦礫もない。
焼け跡もない。
血の匂いもない。
――だからこそ、皆が分かってしまう。
これは災害ではない。
判断の結果だ。
登校の鐘は鳴らなかった。
代わりに、廊下に立つ教師の姿が増え、
あちこちの扉に封印札が貼られていた。
普段なら笑い声が反響する中庭には、見回りの足音だけが残る。
「当面、授業は中止」
短い通達が掲示される。
理由は書かれていない。
書けないのだ。
生徒たちは集まって話す。
だが声量は自然と落ちる。
噂が回る速度だけが、異常に速い。
「観測局が来たって……」
「名前を呼ばれたって……」
「同調が、消えたって……」
誰もが口にする言葉は、
一つの結論へ収束していく。
――ゼル・オルディア。
最下位の劣等生。
測定不能。
隔離対象。
その名前が、
今や学院の中心に据えられている。
ゼル自身は、隔離区域から出されていない。
だが彼の存在は、
学院の外へと押し広げられていた。
事故が起きなかったことが、
事故になった。
その矛盾が、
学院という秩序の皮を剥ぎ取り始めていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第21話 学院の終わり(2)へ続く




