第20話 世界が気づく(3)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
その瞬間、
隔離区域の結界が、音もなく解けた。
壊れたのではない。
解除されたのでもない。
**“意味を失った”**だけだ。
ゼル・オルディアは、
静かに演習場へ足を踏み入れる。
誰も、止めなかった。
止められなかった。
ノクスの視線が、
初めて彼を捉える。
「……ああ」
小さな、納得の声。
ゼルは、
同調陣の近くまで歩く。
力は使わない。
意志も、向けない。
ただ、
そこに立つ。
次の瞬間――
同調陣が、音もなくほどけた。
魔力が、消えた。
暴発も、反動も、ない。
最初から、
存在しなかったかのように。
リリアは、
その場に崩れ落ちる前に、
誰かに支えられた。
生きている。
だが、
もう“同じではない”。
ノクスは、
深く息を吐いた。
「……基準点、確定」
空間に、
見えない刻印が走る。
記録が、
世界に残る。
「ゼル・オルディア」
彼は、
はっきりと名前を呼ばれた。
「あなたは、
世界が気づいてしまった存在です」
それは、宣告だった。
祝福でも、
断罪でもない。
認識だ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第20話 世界が気づく(4)へ続く




