第20話 世界が気づく(2)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
「私は、
世界観測局・執行官」
名乗りは短い。
教師の一人が、
反射的に膝を折った。
観測局。
それは、
国家より上位に存在する“世界側の機関”。
魔術の管理者でも、
研究者でもない。
――異常が“世界そのもの”に影響する段階でのみ、
姿を現す存在。
「この場で進行中の現象は、
事故ではありません」
ノクスの視線が、
同調陣をなぞる。
「代替。
均一化。
基準点の模倣」
一つずつ、
淡々と言葉を並べる。
「すべて、
過去に失敗しています」
その一言で、
教師たちの顔色が変わった。
「成功例は?」
誰かが、震える声で問う。
ノクスは、
ほんの一瞬だけ考えるような仕草をしてから答えた。
「ありません」
断言だった。
「基準点は、
作るものではない。
存在するものです」
その言葉に、
アーヴェル・ヴァルディシアの視線が鋭くなる。
「……ならば、
我々はどうすればよかった」
ノクスは、
初めて彼を見た。
「気づかないことです」
冷酷なほど、
正確な答えだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第20話 世界が気づく(3)へ続く




