第19話 壊れる前提(2)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
判断は、冷静だった。
感情を排した声で、
教師たちは可能性を並べる。
「陣を破壊すれば、
反動で周囲に被害が出る」
「結界を重ねれば、
中心への負荷が増える」
「解除詠唱は通らない」
どの選択肢も、
誰かが傷つく。
そして、
最も“被害が少ない”案が、
無言のうちに共有される。
「……中心が、耐えきれなくなった場合」
言葉は、
慎重に選ばれている。
「意識を失わせ、
同調を断つ」
それは、
壊れることを前提にした停止策だった。
誰も反論しなかった。
倫理ではなく、
効率の問題として処理される。
一人を壊せば、
全体は助かる。
誰も、それを口にしない。
だが、
全員が同じ結論に辿り着いている。
観測者の遠隔水晶が、
淡く光る。
《記録継続》
《判断委任》
外からの指示は、
それだけだった。
――壊れるかどうかは、
現場で決めろ。
責任は、
ここに残る。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第19話 壊れる前提(3)へ続く




