第18話 事故の形(3)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
隔離区域。
ゼルは、
はっきりと理解していた。
これは、
失敗じゃない。
成功した結果、
起きている。
代替が、
“代替のまま”成立してしまった。
均された魔力。
中心に集まる負荷。
止める理由の消失。
世界は、
それを「正解」とは認めない。
だが、
魔術は正解のまま進んでいる。
最悪の形だ。
演習場の空気が、
歪む。
観測者の水晶が、
外部で反応を始める。
誰かが叫ぶ。
「中心を離せ!」
「陣を壊せ!」
だが、
壊せば被害が出る。
止めれば、
誰かが壊れる。
選択肢は、
もう残っていない。
リリアは、
自分が“代わり”だと理解した。
先輩の代わり。
基準の代わり。
それでも、
彼女は思う。
――先輩は、悪くない。
その瞬間、
魔力が一段、重くなる。
ゼルは、
隔離結界に手を伸ばした。
ここから先は、
選択だ。
使わなければ、
彼女が壊れる。
使えば、
世界が確定する。
事故の形は、
もう整っている。
次に動く存在が、
誰かだけが、
まだ決まっていなかった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第19話 壊れる前提(1)へ続く




