第2話 劣等生という安全圏(2)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
だが、その安全圏に、
少しずつヒビが入り始めていた。
最初は、些細な違和感だった。
演習中、隣の生徒の魔術陣が一瞬だけ歪む。
詠唱が、途中で途切れる。
魔力の流れが、わずかに乱れる。
「……今の、見たか?」
「気のせいじゃない?」
そんな会話が、教室のあちこちで交わされる。
事故と呼ぶほどではない。
だが、無視するには多すぎる。
教師たちは原因を探し始めた。
魔術陣の精度。
詠唱の癖。
環境要因。
そして――
視線が、後ろに伸びてくる。
俺は、気づかないふりをした。
視線の意味を考えないようにした。
考えたところで、
何も変えられないからだ。
変えれば、
気づかれてしまう。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第2話 劣等生という安全圏(3)へ続く




