第17話 同調実験(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
実験は、非公開で行われた。
場所は学院地下、かつて補助結界の検証に使われていた演習室。
広さは十分だが、天井は低く、音が反響しやすい。
壁には観測用の水晶が等間隔に埋め込まれ、床には円環状の術式が描かれている。
選ばれた新入生は、五名。
誰もが緊張していたが、恐怖はなかった。
事前説明は丁寧で、危険性は抑えられ、教師たちの表情も穏やかだ。
「開始する。深呼吸を」
合図とともに、同調術式が起動する。
最初の数分は、完璧だった。
詠唱は揃い、魔力の流れは滑らかに重なり合う。
突出も、乱れもない。
むしろ、各自の詠唱が“補われている”ような感覚さえある。
「……成功している」
誰かが、安堵の声を漏らす。
数値も、理論通りだった。
安定度は高く、出力は均一。
不安定化の兆候は、どこにもない。
――代替は、可能だった。
その結論が、
あまりにも早く、
あまりにも自然に、
場を支配し始めていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第17話 同調実験(2)へ続く




