第16話 選ばれる理由(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
呼び出しは、丁寧だった。
叱責でも、命令でもない。
相談に近い形で、リリア・フェルノアは小さな部屋に通された。
窓から差し込む光は柔らかく、机の上には温かい茶が用意されている。
「緊張しなくていい」
教師はそう言って、微笑んだ。
説明は理路整然としていた。
学院の不安定化。
補助結界の限界。
生徒たちの負担。
そして、新しい試み。
「特別なことはしない。
君たちが普段やっていることを、
少し“揃える”だけだ」
リリアは、頷いた。
難しい理論は分からない。
だが、危険だとは感じなかった。
「君は、詠唱が安定している。
集団の中でも、流れを乱さない」
褒められているようで、
責任を渡されていることにも気づく。
「誰かの代わり、というわけではない」
その言葉が、
胸に引っかかった。
――代わり。
それは、
思い浮かべてはいけない名前を、
自然に思い出させる。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第16話 選ばれる理由(2)へ続く




