第15話 代替策(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
学院が不安定になった理由を、
誰も公には口にしなかった。
だが、教師会議の場では、
すでに前提として共有されている。
――基準が、欠けている。
「隔離措置は正しかった。だが……」
年配の教師が、言葉を選びながら続ける。
「彼が“いない状態”に、
我々は慣れていない」
誰かが、書類をめくる音を立てた。
魔術の安定度低下。
補助結界の常設化。
演習制限の増加。
全ては、
“欠けた何か”を埋めるための処置だ。
「ならば」
別の教師が、静かに口を開く。
「代替を用意すればいい」
その言葉は、
驚くほど自然に受け入れられた。
基準がないなら、作る。
自然なものがないなら、
人工的に再現する。
魔術学院として、
あまりにも“正しい”発想だった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第15話 代替策(2)へ続く




