第2話 劣等生という安全圏(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
最下位でいることには、利点がある。
誰も期待しない。
誰も注目しない。
失敗しても、失望すらされない。
それは、ある種の安全圏だった。
二年生になってしばらく経った頃、
俺はそれを改めて実感していた。
授業中、教師の視線は前列ばかりを追う。
質問も、指名も、優秀な生徒に集中する。
最後列の端――
俺の席に、視線が向くことはほとんどない。
「ゼル、次の課題は……まあ、提出だけしておけ」
そんな扱いで十分だった。
魔術が使えない生徒に、
高度な成果など求められていない。
だからこそ、
俺は学院にいられる。
退学にならない程度に出席し、
規則を破らず、
波風を立てない。
それが、俺の生存戦略だった。
――少なくとも、そう思っていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第2話 劣等生という安全圏(2)へ続く




