第14話 揺らぐ秩序(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
揺らぎは、音もなく始まる
隔離が実施されてから三日。
学院は、表向きには何一つ変わっていなかった。
授業は予定通り行われ、
鐘は時間通りに鳴り、
生徒たちは席につく。
秩序は、保たれているように見える。
だが、魔術は正直だった。
詠唱の最後で、音が僅かにずれる。
陣の閉じが、ほんの一拍遅れる。
発動後の余韻が、必要以上に長く残る。
「……誤差が増えている」
演習記録を確認していた教師が、低く呟いた。
数値は、基準内だ。
魔力量も、属性反応も、異常はない。
だが、安定度だけが、確実に落ちている。
原因は分かっている。
だが、それを原因として認めることはできない。
――彼が、いない。
それだけで、
これほどまでに魔術が揺らぐなど、
認めてしまえば終わりだからだ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第14話 揺らぐ秩序(2)へ続く




