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魔術学院の最下位だった俺に、世界が気づくまで  作者: じゃむ


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第13話 動かない選択(3)

本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。

静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。


夕方、

エリシアが再び扉の外に立った。


「……まだ、動かないつもり?」


問いは、責めではなかった。

確認だった。


「動かない」


俺は即答した。


「今、動けば――

 “正解”になる」


エリシアは、短く息を吐く。


「正解は、

 世界にとって都合がいいだけ」


「だから、選ばせない」


俺は、扉越しに続けた。


「俺が動かなければ、

 世界は、次の手を出す」


「……危険よ」


「分かってる」


だからこそ、

動かない。


力を使わないために、

力を見せないために。


動かないという行為で、

世界の手番を奪う。


沈黙。


やがて、

エリシアが静かに言った。


「あなたは……

 自分を、

 駒にしないのね」


「誰かのための駒には、ならない」


そう答えると、

彼女は少しだけ、微笑んだ。


「……なら、

 私も動く」


足音が、遠ざかる。


隔離された部屋に、

再び静寂が戻る。


俺は、天井を見上げた。


動かない選択は、

逃げじゃない。


次に動くための、準備だ。


世界が焦れるほど、

こちらの余地は広がる。


――さあ、

どこまで待てる?


その問いだけが、

静かに、確かに、

俺の中で燃えていた。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。

続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。

第14話 揺らぐ秩序(1)へ続く

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