第13話 動かない選択(2)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
昼過ぎ、
隔離区域の外が、わずかに騒がしくなった。
観測装置の起動音。
教師の短い指示。
走る足音。
――また、何か起きたな。
だが、
ここには報告は届かない。
隔離とは、
情報も遮断する。
俺が知るのは、
“起きている”という事実だけだ。
扉の向こうで、
声がする。
「……彼がいないと、
安定しない」
誰かが、そう言った。
俺は、思わず笑いそうになった。
逆だ。
俺がいるから、
起きない。
だがそれは、
俺が動いていないからだ。
近くにいれば、
世界は静まる。
遠ざければ、
世界は不安定になる。
――それでも。
それでも俺は、
自分から近づかない。
“役割”を引き受けない。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第13話 動かない選択(3)へ続く




