第11話 制御不能(3)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
結果は、起きなかった。
音が、消えた。
衝撃が、消えた。
魔力が、行き場を失った。
まるで、
「そうなる予定がなかった」かのように。
抑制結界は、
起動していない。
観測水晶は、
数値を出せないまま沈黙している。
演習場に、
遅れてざわめきが広がる。
「……今の、何だ?」
「抑えたのは、誰だ?」
誰も答えられない。
制御したわけではない。
抑え込んだわけでもない。
成立しなかった。
それは、
魔術師にとって最悪の結果だった。
制御不能。
止められない。
起こせない。
再現できない。
選択肢そのものが、
世界から消えている。
リリアが、こちらを見る。
恐怖ではない。
だが、理解がある。
――先輩の近くでは、
起きない。
その事実は、
安全ではない。
危険だ。
俺は、静かに息を吐いた。
もう、偶然では済まされない。
事故は、
止められたのではない。
世界が、
勝手に判断した。
そして、
それを制御できる者は、
学院にも、教師にも、
どこにもいない。
理解していた。
次は、
魔術で止めに来るのではない。
――人が、止めに来る。
その気配だけが、
はっきりと、背後に立っていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第12話 隔離措置(1)へ続く




