第11話 制御不能(2)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
午前の演習は、
段階的出力調整を伴う集団魔術。
本来は、
制御力を養うための内容だ。
だが今回は、
教師の動きが違った。
詠唱が始まる前から、
結界の担当が配置につく。
観測係が水晶盤に手を置く。
――様子を見る。
誰が、ではない。
何が起きるかを。
詠唱が重なり、
魔術陣が輝きを増す。
空気が、わずかに歪む。
俺は、それを感じ取っていた。
魔力の流れが、
「進もう」としている。
だが、
進む理由が定まっていない。
嫌な兆候だ。
一年生の列で、
リリア・フェルノアが詠唱している。
真面目だ。
集中している。
だが、その集中が、
彼女自身を縛っている。
一瞬、呼吸が乱れる。
詠唱の節が、
ほんのわずかにずれる。
魔術陣が、軋んだ。
「抑制結界、準備!」
教師の声が飛ぶ。
魔力が跳ねる。
熱が集まり、
“事故になる直前”の気配が立ち上がる。
――来る。
俺は、反射的に一歩踏み出しかけて、止まった。
動けば、
原因になる。
動かなければ、
結果が見える。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第11話 制御不能(3)へ続く




