第11話 制御不能(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
事故は、起きなかった。
だからこそ、
誰も「失敗だった」と言えなかった。
前日の演習は、
公式には問題なしとして処理された。
報告書には、抑制結界の動作確認、
安全管理の徹底、
再発防止策――
無難な言葉が並んでいる。
だが、学院の朝の空気は、
明らかに違っていた。
教師の数が増えている。
演習場の結界が二重に張られている。
水晶式の観測装置が、
あちこちに追加されている。
――警戒だ。
何が起きたか分からないものを、
「起きなかったから大丈夫」とは扱えない。
俺は、後方見学の位置に立っていた。
昨日と同じ。
変わらない配置。
変わったのは、
俺を見る目だった。
嘲笑はない。
無関心もない。
代わりにあるのは、
判断を保留した視線。
事故が起きなかったことで、
安心は生まれなかった。
むしろ、
「説明できない」という事実だけが、
重く積み上がっていく。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第11話 制御不能(2)へ続く




