第10話 事故は準備される(2)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
演習前日の夜。
学院の一角、
立ち入り制限区域の灯りが、消えていなかった。
誰かが、残っている。
偶然、ではない。
俺は、遠くからその様子を眺めていた。
近づくことはできない。
――近づけば、
観測される。
床に描かれる術式は、
明らかに通常演習用ではなかった。
出力補助陣。
多重干渉構造。
暴走時の逃げ道は、少ない。
「……一年生を混ぜる構成じゃない」
視線の先に、
リリア・フェルノアの姿があった。
彼女は真剣な表情で、
陣の説明を聞いている。
知らないのだ。
これは“訓練”じゃない。
試験でも、教育でもない。
――切り分けだ。
安全か。
危険か。
制御可能か。
誰が、とは言わない。
だが、
何が対象かは、分かっている。
俺は、視線を伏せた。
止める理由が、ない。
説明する言葉も、ない。
それが、
一番まずい。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第10話 事故は準備される(3)へ続く




