第10話 事故は準備される(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
その通達は、あまりにも自然に出された。
「次回の合同演習は、
実践応用を想定した高度魔術演習とする」
教室に、ざわめきが走る。
二年生には、少し早い内容。
一年生にとっては、明らかに過剰。
だが、異を唱える者はいなかった。
最近の学院では、
“例外”が増えている。
測定不能。
禁書庫の反応。
原因不明の安定化。
理由が分からないなら、
実験すればいい。
それが、学院の論理だった。
俺は、名簿の端に目を落とす。
【配置:後方見学】
――やはりな。
個別観察対象に、
実践参加は許されない。
だが、
見学はさせる。
観測のためだ。
「……嫌な予感しかしないな」
小さく呟いても、
それを止める権限はない。
事故は、
偶然では起きない。
起きる前に、
必ず“準備”がある。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第10話 事故は準備される(2)へ続く




