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魔術学院の最下位だった俺に、世界が気づくまで  作者: じゃむ


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31/109

幕間 決意の夜 ―― アーヴェル・ヴァルディシア

本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。

静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。


夜の演習場は、静かすぎた。


魔力灯は落とされ、

床に刻まれた陣だけが、かすかに残光を帯びている。

ここは、秩序が可視化される場所だ。


――だから、落ち着く。


アーヴェルは一人、中央に立った。


今日も魔術は完璧だった。

詠唱は乱れず、陣は応え、結果は再現される。

世界は、理解できる形で動く。


それが正しい。


理解できないものが、

理解できないまま在ることなど、許されない。


妹の言葉が、脳裏をよぎる。


「彼を、人として見ていますか?」


問いそのものが、間違っている。


人であるかどうかではない。

世界にとって、許容できるかどうかだ。


アーヴェルは杖を握る。


名門の血。

積み上げた努力。

守るべき秩序。


それらを否定する存在が、

偶然であっていいはずがない。


「……次は、起こらないようにする」


誰に向けた言葉でもない。

誓いですらない。


ただの、決定だ。


事故は、

準備されなければ起きない。


ならば、

起きるべき事故を、

起こす準備をすればいい。


誰かが傷つくとしても、

それは“必要な犠牲”だ。


理解できないものを放置するより、

はるかに健全だ。


アーヴェルは、夜空を見上げた。


星々は、

決められた軌道を外れない。


――正しい。


だから、自分も外れない。


そのために、

排除が必要なら、

迷う理由はなかった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。

続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。


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