第9話 兄弟の温度差(2)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
「見る必要があるのか?」
静かな声だった。
「魔術を使えない。
測定不能。
禁書庫が反応する存在」
彼は指を折りながら続ける。
「それは、
すでに個人の問題じゃない」
「でも、彼は何もしていません」
エリシアは一歩、踏み出した。
「壊したことも、奪ったこともない。
ただ、そこにいるだけです」
「だから危険なんだ」
アーヴェルの声が、わずかに強くなる。
「意図がない力ほど、制御できないものはない」
それは、
魔術師として正しい判断だった。
だからこそ、
エリシアは唇を噛んだ。
「……兄様は、怖いんですね」
その言葉に、
アーヴェルの眉が動いた。
「何?」
「彼が理解できない存在だから」
沈黙。
それが、答えだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第9話 兄弟の温度差(3)へ続く




