第8話 禁書庫の反応(2)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
扉が開いた瞬間、
空気が変わった。
湿り気を帯びた冷気。
古い紙と、魔力の残滓の匂い。
壁一面に並ぶ禁書。
鎖で封じられたもの。
封印陣の中に浮かぶもの。
どれもが、
「触れてはいけない過去」だ。
俺が一歩、足を踏み入れた瞬間――
微かな音がした。
カチリ、と。
教師が眉をひそめる。
「……今のは?」
次の瞬間、
棚の一角から、紙が擦れる音が響いた。
一冊の本が、
誰にも触れられていないのに、
ゆっくりとページをめくり始める。
「あり得ない……」
禁書は、
意思を持たない。
持ってはいけない。
それなのに、
俺が近づくだけで、
“反応”している。
さらに奥。
古代装置と思しき円盤が、
淡く光を帯び始めた。
文字列が浮かび上がる。
だが、それは
既存の記録にはない形式だった。
教師が、息を呑む。
「……こんな反応、
記録にない」
俺は、何もしていない。
ただ、
そこにいるだけだ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第8話 禁書庫の反応(3)へ続く




