第8話 禁書庫の反応(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
呼び出しは、唐突だった。
午後の授業が終わった直後、
廊下を歩いていると、見慣れない教師に声をかけられた。
「ゼル・オルディア。
学院地下へ同行してもらう」
理由は告げられない。
拒否権もない。
個別観察対象――
その言葉が、頭の中で静かに反響する。
地下へ続く階段は、
普段の学院とは別の空気をしていた。
光が少ない。
音が吸われる。
魔力の流れが、意図的に抑え込まれている。
「ここから先は、
許可なく立ち入ることはできない」
扉の前で、教師が足を止める。
禁書庫。
魔術学院の中でも、
“記録だけが残され、研究されない場所”。
――近づきたくなかった。
理由は分からない。
ただ、直感が告げている。
ここは、見つかる場所だ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第8話 禁書庫の反応(2)へ続く




