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魔術学院の最下位だった俺に、世界が気づくまで  作者: じゃむ


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24/115

幕間 近づけない理由 ―― リリア・フェルノア

本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。

静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。


先輩の周りに、線が引かれた。


目に見える線じゃない。

縄でも、壁でもない。

でも、確かにそこにある。


「近づかないように」


誰かが言ったわけじゃない。

命令も、注意もなかった。


ただ、

視線が変わった。


先輩を見る目が、

噂を見る目から、

確認する目に変わった。


私は、それが怖かった。


演習のとき、

先輩はいつも後ろに立っていた。


魔術が使えないから。

そう、みんなは言う。


でも私は知っている。


先輩が近くにいると、

胸の奥が静かになる。


詠唱の言葉が、

途中で絡まらなくなる。


――安心する。


それを口にした瞬間、

先輩は少しだけ、

遠くを見る目をした。


「偶然だよ」


そう言った声は、

優しかったけれど、

はっきりと線を引いていた。


今日、

私は先輩に話しかけないように言われた。


理由は、分からない。

でも、分かってしまった。


私が近づくと、

先輩の“立場”が悪くなる。


私が安心すると、

先輩が“観られる”。


だから、

私は立ち止まった。


それでも、

一つだけ、確かなことがある。


先輩は、怖くない。


怖いのは、

みんなが同じ目をする瞬間だ。


理解しようとする目。

測ろうとする目。

名前をつけたがる目。


その目が揃ったとき、

人は簡単に、

人じゃなくなる。


だから私は、

近づかない。


近づけない。


でも――

忘れない。


あの静けさを。

あの安心を。


誰かが線を引いたとしても、

私の中まで、

引かせたりしない。


それが、

私にできる、

唯一の距離の取り方だった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。

続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。


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