第6話 測定不能(3)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
測定後、
俺は別室に呼ばれた。
簡素な応接室。
机の上には、測定結果が並べられている。
教師は一枚の紙を指差した。
「君の測定結果だ」
そこには、他の生徒と同じ項目が並んでいる。
だが、俺の欄だけが違っていた。
【魔力総量:測定不能】
【属性傾向:該当なし】
【発動安定度:対象外】
そして、最後に小さく書き添えられている。
【備考:再検証要】
「偶然だと思うかね?」
教師は、俺を試すように見ていた。
「……分かりません」
それが、唯一の正解だった。
教師は小さく頷く。
「君は、当面“個別観察対象”とする」
個別。
観察。
その言葉が意味することを、
俺は正しく理解していた。
自由が減る。
視線が増える。
逃げ場がなくなる。
部屋を出ると、廊下の向こうに新入生の少女がいた。
彼女は何も言わない。
ただ、不安そうに俺を見る。
染まっていない目。
だが、もう“何か”を感じ取っている目。
俺は視線を逸らし、歩き出した。
――まずい。
測定不能という結果は、
安全でも、無害でもない。
それはただ、
「分からないから、もっと調べる」
という宣言に過ぎない。
最下位の席は、
もう俺を守らない。
学院は、
静かに、確実に――
俺を囲い込み始めていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第7話 個別観察対象(1)へ続く




