第6話 測定不能(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
測定不能(1)
観測は、一度始まると止まらない。
前日の測定以降、学院の空気は明らかに変わっていた。
ざわついているわけではない。
むしろ、静かすぎる。
廊下を歩く生徒たちの視線が、
以前よりも慎重になっている。
「……また測定あるらしいよ」
「例の二年の……ほら、魔術使えない人」
名前は出ない。
だが、話題の中心が誰かは分かる。
俺――ゼル・オルディアは、
いつも通り最後列の端に座っていた。
成績も、席も、立場も変わらない。
変わったのは、
周囲の“見方”だけだ。
授業開始前、教師が名簿を確認する。
「……ゼル・オルディア」
呼ばれた瞬間、教室が一瞬静まり返る。
「本日の演習では、君も測定対象に含まれる」
反論の余地はない。
質問する空気でもない。
俺は、ただ頷いた。
測る。
分類する。
管理する。
魔術学院が異常に対して取る、
いつものやり方だ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第6話 測定不能(2)へつづく




