第5話 「観測される違和感」(3)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
演習後、
教師に呼び止められた。
「ゼル・オルディア。少し、話がある」
予想はしていた。
逃げ道も、言い訳もない。
応接室。
机の上には、観測記録が並べられている。
「君の魔力値は、測定不能だ」
事実だ。
「だが、君が近くにいると、
他者の発動安定度が上がる」
……やめてくれ。
それ以上、言葉にするな。
「偶然だと思います」
俺は、そう答えた。
教師は否定しなかった。
肯定もしなかった。
「偶然かどうかは、
観測を重ねれば分かる」
その一言が、決定打だった。
観測。
重ねる。
分かる。
――見つかる。
部屋を出た廊下で、
新入生の少女とすれ違った。
彼女は何も言わなかった。
だが、その目は、はっきりと俺を追っていた。
染まっていない目。
測ろうとしない目。
それでも、
“気づき始めている目”。
俺は歩きながら、確信していた。
最下位の席も、
劣等生という安全圏も、
もう意味を持たない。
世界は、
静かに、だが確実に――
俺を観測し始めている。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第6話 「測定不能」(1)へ続く




