第37話 捕獲(3)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
「……一つだけ聞かせろ」
ゼルは歩きながら言った。
「もし俺が、
あの村で動かなかったら?」
ハルバートは即答しない。
数歩、沈黙が続く。
「捕獲は、遅れた」
それが答えだった。
「お前は逃げ続け、
世界は次の手段を選んだ」
つまり、
より強い強制。
より荒い管理。
ゼルは、わずかに笑った。
「なら、これでいい」
捕獲された理由は、
弱さではない。
選んだ結果だ。
基準は、
救った。
だから、置かれる。
だが――
置かれた場所で、
何を選ぶかは、まだ残っている。
ハルバートが足を止めた。
「ここだ」
見上げた先に、
高い塔があった。
都市の中心。
逃げ場のない位置。
捕獲は終わった。
そして同時に、
新しい檻が始まる。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第38話 配置(1)へ続く。




