第35話 追跡者(2)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
「捕獲とは、拘束じゃない」
ハルバートは淡々と続ける。
「基準は、
壊せない。排除できない。
なら、最適な位置に置く」
最適。
誰にとって?
「世界にとってだ」
答えは、即座だった。
「影響範囲、人口密度、事故発生率。
お前が立つべき場所は、
もう計算されている」
ゼルは、歯を食いしばる。
それは、彼が拒んできたすべてだ。
数で測られ、
効率で配置され、
“必要な場所”に固定される。
「拒否権は?」
「ある」
ハルバートは、否定しない。
「だが拒否すれば、
次の段階に進むだけだ」
次の段階。
言葉は穏やかだが、意味は明確だった。
強制は、まだ軽い。
世界は、もっと荒い手段を残している。
「お前は賢い。
だから逃げた」
その評価が、
皮肉のように響く。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第35話 追跡者(3)へ続く




