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魔術学院の最下位だった俺に、世界が気づくまで  作者: じゃむ


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第3話 新入生の視線(3)

本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。

静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。

「変じゃない?」


思わず聞き返すと、

少女は少し慌てて言葉を探した。


「あ、えっと……変っていうか……」


考え込みながら、

ゆっくりと言葉を選ぶ。


「学院って、みんな魔術が使えるのが当たり前で……

 だから、使えない人は、もっと……こう……」


言葉が途切れる。


「下に見られる、っていうか」


正直だ。


俺は、小さく息を吐いた。


「そうだな」


そう答えると、

彼女は少し驚いた顔をした。


「でも、先輩は……」


彼女は俺を見上げる。


「怖くないんです」


その一言が、

予想外だった。


「魔術が使えないって聞いて、

 もっと、怯えてる人かと思いました」


――違う。


怯えている。

ただ、理由が違うだけだ。


「それに……」


彼女は、少し声を落とす。


「先輩の周り、さっき……静かでした」


俺の背筋が、わずかに強張った。


「実技場で、魔術が暴れそうになった時、

 先輩が近くにいたら……急に、落ち着いた気がして」


偶然だ、と言おうとして、やめた。


言い訳は、疑念を呼ぶ。


「気のせいだ」


そう言うと、

彼女は少し残念そうに笑った。


「……そうですよね」


だが、その目には、

まだ消えていない光があった。


好奇心。

疑問。

そして、わずかな――期待。


彼女は最後に一礼して、去っていく。


その背中を見送りながら、

俺は確信していた。


――まずい。


染まっていない視線ほど、

よく見える。


最下位の席よりも、

劣等生という安全圏よりも。


この“何も知らない新入生”の視線の方が、

よほど危険だった。


世界が気づく前に、

人が気づき始めている。


それが、

何より厄介な兆しだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。

続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。

第4話 染まっていない目(1)へ続く

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