第33話 罰則(3)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
人々もまた、変化に気づき始めていた。
「あの人、今日は動かなかったな」
「昨日より、範囲が狭くないか?」
噂は、すぐに理解へと変わる。
――助ければ、次は助けられなくなる。
――違反すれば、基準が弱くなる。
その理解は、
期待を抑える代わりに、別の圧力を生んだ。
「無理をさせるな」
「これ以上、縛られるな」
助けを求める声と、
助けるなという声が、同時に向けられる。
ゼルは、その中心に立っていた。
動けば罰が増す。
動かなければ、人が死ぬ。
基準にとって、
罰則とは抑止ではない。
選択を重くし続ける装置だ。
ノクスが、最後に記録する。
《罰則:有効》
《行動抑制:成功》
《心理負荷:上昇》
ゼルは理解した。
罰は終わりではない。
これは、次の段階へ進むための準備だ。
世界は、まだ足りないと思っている。
もっと縛れる。
もっと管理できる。
そして次に来るのは――
罰を超えた、別の手段だった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第34話 逃走(1)へ続く




