第33話 罰則(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
罰は、宣言されなかった。
鐘も鳴らず、裁きの言葉も降ってこない。
それでも、世界は確実に変わっていた。
翌朝、指定区域の境界がわずかに内側へ寄せられている。
誰かが線を引き直したわけではない。
だが、空気の張りが違う。
魔術の成立率が、数歩分だけ低下していた。
「……狭まっているな」
ゼルの呟きに、ノクスが頷く。
「違反に対する調整です。
世界は、基準の行動を“許容”ではなく
“管理対象”として再計算しました」
管理。
その言葉は、罰というよりも冷たかった。
監督官が増えている。
姿を見せずとも、視線の圧が増したことが分かる。
歩けば記録され、立ち止まれば理由が付く。
誰も咎めない。
誰も責めない。
ただ、余白だけが削られていく。
罰とは、痛みではない。
行動の自由を、静かに細くすることだ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第33話 罰則(2)へ続く




