第31話 指定(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
通達は、夜明けと同時に届いた。
紙ではない。
声でもない。
世界そのものが、告げてきた。
街の上空に、淡い光の文字が浮かび上がる。
誰にでも読める。
誰にでも理解できる。
《指定通達》
《対象:基準》
《任務:安定化補助》
《範囲:指定区域》
《期間:未定》
ざわめきが、街に広がる。
命令ではない。
契約でもない。
だが、撤回の余地が存在しない形式だった。
ノクスは、静かに言った。
「これが、
世界が選んだ“最も穏健な強制”です」
「……穏健?」
「拒否すれば、
より荒い手段が選ばれる」
それは、
脅しではない。
手続きの説明だ。
指定とは、
世界が“例外を組み込む”ときに使う言葉。
基準は、
もはや想定外ではない。
制度の一部になった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第31話 指定(2)へ続く




