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空の王者と、森のちゃっかりくまさん

掲載日:2025/12/18

ハクトウワシのアンクルさんとくまのシーさんの物語w

 昔々、ある森に、赤いネクタイを締めたハクトウワシの「アンクル」がいました。彼は空からの監視者であり、森の秩序は自分が守っていると自負していましたが、同時に欲しいものは力で手に入れる強引さも持っていました。

 同じ森には、「シー」という名の、いつもニコニコしているクマもいました。彼は争いを避け、のんびり暮らしているように見えました。

 ある日、アンクルは上空から、シーが黄金色に輝くたっぷりのハチ蜜が入った壺を抱えているのを見つけました。


「あの壺は確かハチ族の壺だ。あのクマ、どこからか持ってきやがったな。取り返してやらんと」


 アンクルはそう考え、急降下しました。


「おい、クマ! その壺をどこから手に入れた!」


 シーは、アンクルの鋭い爪と威圧的な態度にも全く動じず、ゆっくりと、とろけるような蜂蜜をひとさじ口に運びました。そして、とぼけたような穏やかな笑顔で答えました。


「おや、アンクル。奇遇ですね。そんなに怒鳴らないでくださいよ。これはね、森の皆のために私が『お預かり』しているのですよ」

「預かっているだと? 盗んだの間違いだろう! その壺はハチ族の長老のものだ!」


 アンクルはさらに声を荒らげ、翼を大きく広げました。


「とんでもない。これだから力の強い方々は困る」


 シーはわざとらしくため息をつきました。


「最近、森は物騒でしょう? 弱いハチさんたちが、せっかく集めた貴重な蜜を乱暴者に奪われないか、ひどく心配していたのです。そこで、この私が安全な場所へ移送し、管理するボランティアを引き受けたのですよ。これはその品質チェックのための『試食』です。管理者は中身を知っておかねばなりませんからね」


 シーの言葉は、一見すると筋の通ったもっともらしい「正論」に聞こえましたが、その口元は蜜でベタベタです。

 アンクルは、黄金色に輝く壺の中身に釘付けになりました。濃厚で甘い香りが鼻腔をくすぐります。「森の秩序を守る」という当初の目的は、目の前の莫大な利益(ハチミツ)の前で、急速に薄れていきました。あんなに大量の蜜、自分だって舐めてみたい。


「ふん、お前のようなのんびり屋に管理が務まるものか。その役目、この空の王者である俺様が引き受けてやる! よこせ!」


 アンクルの単純な頭の中は、もう蜜のことで一杯でした。彼は強引に壺を奪おうと、後先考えずに突っ込みました。


「おっと、危ない! そんなに乱暴にすると……!」


 シーは、わざとらしく驚いたふりをして、壺を傾けました。 壺が大きく傾き、中身の蜂蜜がドロリとこぼれ出しました。ベタベタしたハチ蜜は、狙いすましたように、アンクルの自慢の白い頭と翼、権威の象徴である赤いネクタイにたっぷりとかかってしまいました。


「ぐわっ! 何をする! ベタベタじゃないか!」


 視界を奪われ、粘り気のある蜜にまみれたアンクルはパニックに陥りました。慌てて羽ばたきましたが、蜜が絡みつき、動けば動くほど自慢の白い羽が抜け落ちて宙を舞います。 もがいた拍子に、赤いネクタイも引きちぎれて地面に落ちてしまいました。


「ああ、なんてこと。アンクル、力が強すぎるからこぼれてしまったじゃないですか。もったいない」


 シーは困ったような顔を作りながらも、まだたっぷり蜜が残っている壺をしっかりと抱え直しました。


「そんなに乱暴にしなくても、話し合えばよかったのですよ。力づくで奪おうとするから、結局誰も得をしない結果になったじゃないですか」


 そして、蜜まみれで無様に暴れる「空の王者」を一瞥し、スタスタとその場を去っていきました。


「これからは、私が責任を持って、安全な私の家で『管理』しますからね。ご苦労様でした」


 残されたのは、自分の強欲さで足元をすくわれ、見る影もなくなったアンクルだけでした。

 空の王者は、ベタベタの体で森の仲間たちに見られるのを恥じ、スゴスゴと歩いて去っていきました。





 ……さて、ここからが本当の話です。


 アンクルが去った後、シーは残ったハチ蜜を指ですくって舐めました。

 その一部始終を、遠くの木の陰から見ていた者たちがいました。蜜の本当の持ち主である、小さなハチたちです。

 実は、この壺に入っていた大量のハチ蜜は、シーが自分で集めたものではありませんでした。

 アンクルが考えた通り、森の小さな働きバチたちが、長い時間をかけて一生懸命貯めていた巣から、シーが彼らの留守中にこっそりと「拝借」してきたものだったのです。

 遠くの木の陰から、巣を荒らされた小さなハチたちが、涙を浮かべてこちらを見ているのにシーは気づいていました。

 ハチたちは、自分たちの血と汗の結晶が、強者たちのくだらない争いと、ずる賢い者の策略によって地面にぶちまけられるのを、ただ無力に、涙を流して見ていることしかできませんでした。

 シーは、先ほどアンクルに言ったセリフなどどこ吹く風と、満足げに独り言を呟きました。



「あーあ、ずいぶんこぼれちゃった。でもまあ、残りは全部ボクのものだ。騒がしいワシもいなくなったし、ゆっくり楽しもう」



真の教訓:

1 強欲な者は、目の前の利益に目がくらみ、自分の足元をすくわれる(アンクルの教訓)

2 穏やかな顔をして「正論」を言う者が、実は一番の搾取者であることもある(シーの教訓)

3 大きな力同士が争っているとき、本当に泣いているのは、その陰にいる小さな者たちである(ハチたちの教訓)

挿絵も作ったけど、アップしたら消されてしまう……。

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