マヤ 1
こんばんは!白間夢縁です!
2話目書けました〜!
それでは、本編スタート!
大丈夫…きっと守ってあげるから。
だって、私は…
「う、うわぁあああっ!!」
俺は掛け布団を引きはがすようにして起き上がり、そのままめまいを起こして横に倒れこんだ。ゴンッという鈍い音がする。
「いっ…たぁ…」
当然俺の体はベッドから落ち、後頭部をしたたかに打ち付けてしまった。めっちゃ痛い。
打った部分を抑えて床で悶えていると、
「大丈夫、マヤ?」
ルームメイトのテルがのぞき込んできた。眼鏡の奥の瞳が心配そうに揺れている。
「おはよ、アキト…大丈夫、大丈夫…」
俺はゆっくりと起き上がり、ぐちゃぐちゃになった掛け布団を整えた。
俺はマヤ。この桜原高等学校の生徒で、寮生活をしている。
部活動は野球部。そこそこ進学校であるこの高校に通ってるけど、勉強は得意じゃない。体育だけはずば抜けてるって言われるな。だけは、だけどさ。
ルームメイトはテル。俺とは違って博識。成績もクラスでトップに近いらしい。いつも眼鏡をかけてて感情が薄いところもあるけど、結構仲が良い(と、少なくとも俺は思ってるんだけど…)。
この学校は寮か家から通うか選べるし、成績も俺のレベルとあっていたため迷わずここを選んだ。俺は絶対寮に入りたかったし。
友達も数人同じ高校に入ると聞いたときはかなり嬉しかったものだ。友達は多ければ多いほど良いからな。…で、その1人がテル。
「…マヤ、何考えこんでるの?」
「あ、いや…何でもない。朝飯食い行こーぜ!」
そしてしばらく経って。
登校時間になった。
俺はテルと共に教室まで走る。
「おっはよう!」
「…おはようございます」
数人、振り返るだけ。ほんのちょっと挨拶を返してもらえたが、ほとんどのクラスメートは見向きもせずに思い思いの過ごし方をしている。
「さみしっ。みんなもっと挨拶返してくれよぉ」
「ま、しゃーないって。朝からそんな快活な挨拶するマヤの方が珍しい」
からかうようなちょっと低めの声。
振り返ると、長い黒髪をポニーテールにした女子が立っていた。
「クレハ!」
「おはよ、マヤ」
クレハは俺の幼馴染。家も近いし、学校もずっと一緒だったからいまだに仲がいい。明るくさっぱりとした性格だから、接しやすいし。
正直言ってクレハと同じ高校に行きたくて、俺は頑張って勉強したんだっけな。
「よ、クレハ…と、その他男子共!」
クレハの後ろからもう一人、女子が顔を出す。
その髪は…ド金髪。
肩にかかるくらいのセミロングの髪を、綺麗に金髪に染めたその女子生徒は目を細めてニッと笑う。
「男子共とは何だ、男子共とは。いい加減名前を覚えろ名前を」
クラス1の問題児、リンネ。問題行動は日常茶飯事、口調は荒い、校則違反のオンパレード。
クレハがニヤニヤとしているリンネの方をちらっと見て、こちらに向き直り、どこかあきれながらも面白がってる様な声で言う。
「それもしゃーなし。リンネは私以外の名前を覚えてないし」
「お前がそーやって甘やかすから…」
何で成績優秀、比較的真面目なクレハとこんなヤツが仲良いんだろう…
クレハ・リンネペア。ストレートの黒髪と癖のあるド金髪、成績優秀と問題児、穏やかな性格と喧嘩っ早い性格。とにかく正反対すぎるのになぜかこの2人は仲がいい。
「3人とも、早く入らないとホームルーム始まっちゃうよ…?もともと少しギリギリだったわけだし…」
少し焦ったテルの言葉を聞いて、俺達は慌てて教室に入ったのだった。
自分の席に向かうクレハのリボンのバレッタが、ふと目に留まった。
「ん?」
視線を感じたのか、クレハが振り向く。
クレハはからかう様にニカッと笑うと、
「ほら、早く座らないと先生が来るよ」
そう言って自分の席に駆けていった。
とある休憩時間のことだった。
「きゃっ!」
「あ、悪ぃ!ったく、もうちょっと離れてろよ、今いいとこなんだからさァ」
クラスの男子数人が、ふざけていてクレハにぶつかっているのが見えた。
主犯格はクラスの面倒なヤツ、鈴村。
格闘ごっこにでも興じていたのか(高校生にもなって何やってんだ)鈴村がよろけてクレハにぶつかったらしい。
「テメェ!!ぶつかったんだからちゃんと謝れよ!!」
一緒に話していたらしいリンネが怒鳴り声をあげている。
鈴村を筆頭にそこにいた男子グループは反省するそぶりも見せずヘラヘラしていた。
「リンネ、落ち着いて!大丈夫だから!」
今にも掴みかからんばかりのリンネをクレハが止めていた。
クレハは面倒ごとにしたくないのだろう、何とかリンネをなだめる。
リンネは舌打ちし、自分の席を乱暴に引いて座った。
「…もっと怒っていいと思うぜ、クレハ」
「だって、面倒でしょ。あんなヤツらに時間を割く方が」
そんな会話が遠くに聞こえた。
進学校でもこういうヤツはいるんだなあと、入学したときに思った。
どこに行っても、嫌なヤツばっかりだ。
クレハとリンネの代わりに俺がアイツを殴ってこようか…
力は強い方だ。昔とは違って。
あんなヤツら存在すれば邪魔になる。
ならばいっそ消してしまえば
「…マヤ?」
「!」
心配そうにのぞき込んだテルの顔が、目の前にあった。
「…あー…俺、ぼーっとしてた?ごめんごめん。」
「クレハの方見てたんでしょ?…鈴村ムカつくなぁ…」
最後のはほとんど聞こえないくらいボソッと、小さくテルは言った。
鈴村に対して怒っていたのは、テルも同じらしい。いっそリンネがそのままアイツをぶん殴ってれば、スッとしたかもしれねぇな。
クレハは何事もなかったかの様にまたリンネと談笑している。特に気にしてねえのかな…。
昔のクレハなら、喧嘩になっただろうけど…あいつも大人になったってことか。
「どうする?鈴村に一言言ってくる?」
テルは意外と行動派だ。控え目そうに見えて実は結構正義感が強かったりもする。
「…いや、クレハがああ言ってるからな。関わるのはよそう」
「…そっか」
テルは残念そうに言う。
…俺だって、イライラしてなんか落ち着かねぇ。
まー…落ち着け、俺。
その日の、夜のことだった。
夜9時を過ぎ、寮では皆部屋で思い思いにゆっくり過ごしている…はずだった。
部屋のドアがノックされるまで、そう思っていた。
「…開けてもいいかしら?」
寮母さんの声。
「…どうぞ」
テルが返事をし、ドアの方へ行く。
俺はベッドに寝転んで本を読んでいたがなんとなく気になって本をベッドの端に放ってテルの後に続いた。
「どうしたんですか?こんな時間に」
寮母さんは表情を曇らせて、口を開いた。
「鈴村君が、ここに来てたりはしなかったかしら?」
「鈴村が?来てないですけど…アイツがどうかしたんですか?」
「それが…行方不明になったのよ、彼」
マヤ編はまだ続くので、お楽しみに〜!




