表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/77

3話(2)【室町和風ファンタジー / あらすじ動画あり】

ーーーーーーーーーーー

■お忙しい方のためのあらすじ動画はこちら↓

https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI


■他、作品のあらすじ動画

『【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~』


-ショート(1分)

https://youtu.be/AE5HQr2mx94

-完全版(3分)

https://youtu.be/dJ6__uR1REU

ーーーーーーーーーーー


〈ストーリー〉

■■室町、花の都で世阿弥が舞いで怪異を鎮める室町歴史和風ファンタジー■■

■■ブロマンス風、男男女の三人コンビ■■



室町時代、申楽――後の能楽――の役者の子として生まれた鬼夜叉おにやしゃ


ある日、美しい鬼の少女との出会いをきっかけにして、

鬼夜叉は自分の舞いには荒ぶった魂を鎮める力があることを知る。


時は流れ、鬼夜叉たち一座は新熊野神社で申楽を演じる機会を得る。

一座とともに都に渡った鬼夜叉は、

そこで室町幕府三代将軍 足利あしかが義満 (よしみつ)と出会う。


一座のため、申楽のため、義満についた怨霊を調査することになった鬼夜叉。


これは後に能楽の大成者と呼ばれた世阿弥と、彼の支援者である義満、

そして物語に書かれた美しい鬼「花鬼」たちの物語。



「近頃のお前の舞いは、目を瞠るものがあるな」

夕方。稽古をつけてもらっていると、父の清次が言った。

夜の宴での稽古の成果か、最近、鬼夜叉は自分でも演舞の腕がメキメキ上がっているのを感じていた。


「うむ。これなら、どうにかなるかもしれない」

清次は、興奮ぎみに鼻息をもらした。


「聞いて驚け、鬼夜叉。今度行われる新熊野の勧進能に、我が座も召されることになった。しかも、今回は将軍様もいらっしゃるそうだ」

「えっ、将軍様が!? ……ん? 将軍様?」

「まさかと思うが、息子よ。将軍様を知らないのか?」

「そのくらい知ってますよ。鬼斬り伝説で有名な坂上田村麻呂とか、あとは『長恨歌』の玄宗皇帝とかかな?」

「おいおい、それは物語の中の将軍だろう。いい加減、物語と現実を混同するのはやめろ。お前は、今の将軍様を知らないんだな?」


鬼夜叉は素直に頷いた。


「……すみません。僕はどうも、政治には疎くて」

「お前が疎いのは、申楽以外の全てだろう」


清次はきっぱり言って、ごほんと喉を正した。


「今の将軍──足利幕府三代目将軍である義満様は、あらゆる芸能に秀でた風流将軍だと聞く。もしここで将軍の贔屓を得られれば、一座は一躍、都へ進出できるかもしれないぞ。そうすれば、もっと多くの人に申楽を知ってもらえる!」


近頃の清次は、申楽をさらに刷新すべく、日々、新しい演目を創り、演出や音曲に工夫を凝らしていた。その努力が報われたのだろう。先日行われた興福寺での勧進能では、大きな喝采を得ることができた。

その評判が将軍の耳に入り、今回の勧進能につながったのかもしれない。


「やっとだ、鬼夜叉」


清次が、息子の肩をがしりと掴んだ。

「今の将軍である義満よしみつ様は、良いと思った芸には惜しみない支援をしてくださるという。そうなれば、もう乞食だ畜生だと言われることもなくなる。今まで俺たちを馬鹿にしてきた者を見返すことも出来る。あと少し、あと少しの辛抱だ」


肩に食い込んだ清次の指が、これまでの苦労を物語っていた。彼は目じりから落ちるものを気づかれぬように拭うと、さっと顔を上げた。


「さぁ、こうしてはいられない! さっそく稽古だ! びしびし指導するから、覚悟しておけよ!」



そして迎えた、新熊野神社での勧進能の日。

広い境内の一画には、舞台とそれを囲む桟敷席が建てられた。色鮮やかな幕が、初夏の風になびく。舞台正面の地べたには筵が敷かれ、既に農民や神官、下級武士などが大勢集まっていた。


「もしかして、緊張してる?」


舞台袖から客席を覗いていると、後ろからセイがひょっこりと顔を出した。

新熊野での勧進能の話をしたら「面白そう」と言ってついてきたのだ。どうせ他の人には、見えないのだからと好きにさせておいた。

何より、セイがいてくれた方が鬼夜叉としても心強い。


「大丈夫よ。いつも宴会でやっているみたいにやれば。ほら、お客さんなんて雑鬼だと思えばいいの」

「う、うん。ありがとう……」


だが今日は、どうしても雑鬼だと思えない人物が一人いた。

ちらりと、桟敷席の方を見やる。


舞台正面の二階桟敷には、金の屏風が立てかけられ、左右で正絹しょうけんの几帳がなびいていた。

今日一番の主賓の席だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ