1-52 『タレミシア革命』⑦
ここから先はプロローグより読み返しを推奨します。
伏線回収が凄いので。
真夜中に燃え上がる王都。そして、城の抜け道を出たあとからは深緑漂う森の中。
そこにグレイバルは堂々とタレミア家に立ちはだかる。
「おい、グレイバル。アミーはどうした」
「知らないなぁ。そこのアメリアを今すぐ私に渡せば見に行くといい。命だけは助けてやる」
この卑怯者が。
ジークはアメリアを立たせて国王の象徴である神聖な服を脱ぎ捨てた。
「何してるの、あなた」
「お前らは逃げろ。こいつは俺が倒す」
「でも……」
「こう見えて俺はこの国で屈指の魔術師だ。足止めぐらいならできるだろう」
心配する妻リリィ、そして恐怖で何も出来なくなっているアメリア。
ジーク。ここで誓う。
何としてもこの二人を守り抜く、と。
「行け、二人とも」
「……わかった」
「で、なんの茶番だ。ジーク」
「「……!!」」
ジークとリリィは既に遅れを取っていた。
グレイバルはアメリアを抱えていたのだ。
「言った通り、お前らの命は助けてやる。後は大人しくこの国が滅ぶのを見ているがいい」
「ねえ」
「……なんだ?」
「あんた、何言ってるの? 私たちは命が惜しい訳じゃない。それに、あんた本当にうちの大事な娘を奪えると思ってるの?」
「何を言っている。確かに私は……。……!!」
抱えていたのはアメリアの等身大の木だった。
「……お前の天性魔術か?」
「さあ? でも舐めないで。私たちは決してアメリアを渡さない」
「……なるほど。だが、これでわかっただろ。お前らじゃ私には勝てない!!」
ここでジークがリリィに話す。
「ありがとう、リリィ。さすがだよ」
「何言ってんの、そんなの当たり前でしょ。でも……」
「ああ。奴は二人係でじゃないとアメリアを守りきれないと思う」
「そうだね」
「……アメリアに言ってくれるか?」
「わかった」
「そうはさせるか……!」
グレイバルが高位魔術《豪炎の咆哮》を放つ。
それをジークは素手で弾く。
「なにっ……!!」
驚くも無理は無い。
ジークは光の剣術“【秘剣】魔術返し”の応用を使ったのだから。
「行かせねえよ。……俺は決してお前を許さない……!!」
リリィはアメリアに伝える。
「アメリア。聞いて」
「……なあに?」
アメリアの足は極端に震え、怖がっている。
無理もない。
王都は魔術の被弾の音が度々聞こえ、壁からでもわかるぐらいの煙と炎が延々と待っているのだから。
子供ながらにして既にアメリアはわかっていた。
だからと言ってジーク一人で抑えられるほどグレイバルは弱くない。
選択の時。
リリィは言った。
「あの向こうの森をまっすぐ、何も考えず、振りかえらずに走りなさい。絶対、助けてくれる人達がいるから」
その森を抜けた先、ザノア・レミリス大森林を超えた先に世界最強がいる。
アメリアなら大丈夫。リリィはそう確信してアメリアに魔術を充てて頭を撫でる。
でもアメリアは子供だ。
「でも、パパとママは?」
「パパとママは後から行くから」
「絶対……?」
「絶対。約束する。だから――――」
リリィの後ろで途轍もない爆発音が聞こえた。
リリィは振り向く。
「くっそ……」
「この程度か……ジーク・ランドロード・タレミア。全く、がっかりだよ」
「そりゃ、どうも。でも、俺はただの足止めだからな」
「そうか……だったら!」
グレイバルは確実にジークの心臓に貫通させた。だが、これもジークの等身大の木。
「ありがとう。リリィ」
「どういたしまして。じゃあここから私も参加するよ」
「頼んだぞ」
「……うん」
かつてタレミア王国魔術師団で同期であり、ライバルであり、チームメイトだった両者。
手を取り合い、難敵に挑む二人にアメリアは硬直する。
「アメリア、俺はお前を愛してる」
「私も。だから逃げて」
「でも……」
「逃げなさい!!」
「でもパパとママは……」
「早くっ……!!」
アメリアはこの時、リリィのあんな真剣な表情を見るのは初めてだった。いつもはもっと穏やかだから。
それを聞いて慌ててアメリアは走り出す。
遠くにまっすぐ、そのままに。
「行った……」
「行ったな……」
リリィは激しく動揺する。
アメリアにあんな絶望させる顔を作ってしまったから。
「あなた、私嫌われてないかな」
「大丈夫。これが終わったらアメリアに会いに行こう。それまでこいつを討伐することだけ考えよう」
「……うん!」
グレイバルは答える。
「私を討伐……? そんな願望は捨てろ。お前らに待っているのは死だ。お前らを殺した後、アメリアを殺しに行く。せいぜい足掻いてみせろ、ジーク・ランドロード・タレミア! リリィ・ランドロード・タレミア!!」
ジーク・リリィ対グレイバル・サタン。
両者共に死力を尽くし、戦闘が始まった。
※※※※※
アメリアは一回だけリリィとの約束を破り振り返ってしまった。
それは悲惨なもの。見たくないもの。考えたくないもの。
ジークとリリィ。彼らは倒れていた。
それでもアメリアは迷わず走る。わすがな望みを賭けて、父親と母親が迎えに来てくれると信じて。
ここでアメリアはある魔物に出くわしてしまう。
ケルベロス。
アメリアが通った道は奴らの縄張りでもあったのだ。
奴らはアメリアを追いかけた。
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