1-50 『タレミシア革命』⑤
アヴァロンは動き出す。
高位魔術《千差万別の防壁》を展開しながら進撃。
王都を囲う壁を易々と破壊される。
『緊急事態! 緊急事態! 魔物の侵入を確認しました! 直ちに避難を開始してください!』
王都中に仕込まれた魔道具「モニター」により知らされた。
「くそっ…!!」
「なんだこいつ……!!」
「防壁が邪魔すぎる!!」
近くにいた魔術師が奴に応戦するも進撃するアヴァロンに手も足も出ない。
「があああああっ!」
「くっそおおおおおおお!!」
近接戦に持ち込もうとするも高位魔術《千差万別の防壁》が硬すぎて奴の間合いに入れない。
さらに、奴は防壁に触れた魔術師を目視すらせず高位魔術《大噴火》で迎撃してくる。
この侵攻にタレミア王国魔術師団は更なる脅威が訪れる。
「がはっ!」
「こんなもんか……。やはり平民上がりの魔術師じゃ相手にすらならないなぁ。だから嫌なんだよ、この国は!!」
『反国派』による国家転覆で王都は深刻な状況と化す。
「さて、本当は俺も城に行きたかったがここは奴に任せるとしよう。なあ、グレイバル・サタン」
内戦勃発。
これより『タレミシア革命』が進行した。
※※※※※
アミールはグレイバルに問いかける。
「なあ、グレイバル。なんでお前はこんなことをした?」
「なぁに、私はただある人物を探していただけに過ぎない」
「それが姫様だと?」
「そうだ」
「……姫様はまだ民にも顔を見せていない高貴な幼子。まだ因縁をつけられるほど人間関係はでき無いはずだ」
「……お前にはわからないだろう。奴に受けた苦しみ、我ら同胞がどれだけ奴に殺されたかを……。……まあいい。お前より先にアメリアを殺すか」
グレイバルは黙々と黒煙を纏わせ姿を消す。途端に天井よりその姿を晴らすが如く雷が撃ち落とされた。
「俺がそんなことをされると思うか、グレイバル」
「それはそうだな。だったらお前から先に殺しておくか……!」
《死眼》。
魔力少なき者に死をもたらす魔眼。それを出す時点で既にグレイバルは大幅にアミールより魔力量が多いと悟っていた。
《消滅眼》。
アミールはグレイバルと同時に展開。《死眼》の効力を打ち消し、死は免れた。
そこで玉座に居合わせた一部の貴族たちはアミールに加勢しようと詠唱を唱える。が、唱えようとした者は次々に腹部を貫かれた。
「お前、ふざけるなよ。『反国派』を手なずけやがって」
「当然だ。私が無策でここに来ると思ったか。奴らにはこの革命の暁に多大なる名誉を与えることを約束している」
「……王にでもなるつもりか」
「そうだな。仮にアメリアを始末し損ねても私が王になれば見つけ次第、裏切り者として殺すとしようか」
「俺がそんなことさせる訳無いだろ。これは姫様のため、いやタレミア王国の存続を賭けてここで貴様を始末する!!」
無詠唱で放たれるその魔術はまさにアミールがこの国を愛するという意思。
それを察知した一人の貴族が結界魔術《表裏の狭間》でグレイバルとアミールを閉じ込めた。
その魔術を無詠唱で出せる魔術師はこの世でも五大魔術師程の実力を持つ者のみ。
その種子から放たれた光線は奴を木端微塵に粉砕する。
「最高位魔術《向日葵》……!!」
直撃。
グレイバルの身体為す術もなくその場に消えた。
やったか。
「この程度で私を殺せるなど随分見くびられたな」
「……!!」
グレイバルは既にアミールの背後を取っていた。
アミールは咄嗟に高位魔術《蜃気楼》を繰り出そうとするが――――
「がはっ……!!」
中位魔術《礫地の剣》
アミールは腹部を貫かれた。
この時、アミールは確信する。
奴は確かにタレミア王国魔術師団の上位魔術師だ。この時点ではアミールより二段階弱いということになる。
だが、この魔術展開の速度、《死眼》を倒せる程の魔力量。
アミールは《測量眼》を持っていない。故に溢れた魔力を常に制限する程のコントロールを持つグレイバルの力量を今まで気づかなかった。
――――こいつは俺、いやそれ以上の魔術師だ!!
「ほう」
アミールは確かに貫かれたままだ。
だが、そんな痛みなどアミールにとって最高の好機。
鋭い強硬の剣が刺さったままグレイバルの方へ振り向き魔術を放つ。
「《雷の一閃》……!!」
雷を目にも収まらない速さで一直線に打つ魔術をグレイバルは背中を反らして避けた。
そしてグレイバルその背中を反らした体勢すぐに上体を起こし、アミールの腹部を殴った。
「“鉄拳”」
アミールは壁の無い結界中を永遠に飛ばされた。
意識を失いかけようとこの気を逃さんと腹部に治癒魔術を施すアミール。
やがて結界魔術は崩壊し、玉座の壁へと衝突した。
「その程度か……アミール・タルタロス。所詮お前は何も救えない。お前にもたらすのは最悪な死だ」
「……うるせえよ。俺はこの国の治安を守る誇り高きタレミア王国の魔術師だ。必ず、お前を倒す! グレイバル・サタン!!」
「そうか。だが、よく状況を見てみろ」
アミールはこの時驚愕した。
ジークを深く尊敬する『王国派』の貴族たちが倒れ、逆に『反国派』と思われる貴族共が全員立っている。
「さあ、もう一回さっきの言葉を言ってみろ。アミール・タルタロス。言えるものならなあ……!!」
玉座にいる『王国派』はただ一人。
ここから先はアミール一人でここにいる全ての敵を倒さなければいけなくなった。
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