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1-49 『タレミシア革命』④


 新星暦二九八八年五月十一日


 それは突然起きた。

 タレミア王国、王都を囲う壁の外より突然、なんの前触れもなく現れた。


『緊急事態! 緊急事態!! 壁外より未確認のゴーレム型の魔物が現れました!!』


 王都中に魔道具「モニター」を通じてその警告音が響き渡る。


「どういうことだ! 魔物が突然現れるなんて聞いたことないぞ!!」

「わかりません! おそらく召喚魔術によるものかと」

「召喚魔術? 召喚魔術なら壁に仕込まれた魔術がそれ察知して破壊するだろ」

「しかし、出現方法がそれしか考えられません!!」


 ジークは側近を連れて急いで玉座に向かう。


「だが、奴はまだ何もしていないんだよな?」

「はい、ですが!!」


 ジークが玉座の間に現れ、座る。


「皆の者! この緊急事態、よく集まってくれた!! これより緊急会議を行う!!」


 集まった貴族は一斉に立ち膝をつく。


「良い! 面を上げよ! そのようなことをしている場合では無い!!」


 貴族たちは一斉に立ち上がり、会議に入る。


「それであの魔物をどうするかだが、まず報告を」

「はい、現在未確認ゴーレム型の魔物は活動停止中。特徴は、全身が固い皮膚で覆われており、従来のゴーレムと違い、消化器官が存在しています。そして解析の結果、奴は非常に高い魔力量を持っています。おそらく……その魔力量は我が国が誇る魔術師団団長アミール・タルタロスより高いと思われます」

「なんと……!」

「それは不味いな……」

「最悪だ、なぜこんな時にゼルベルン殿が居ないのだ!!」


 五大魔術師(クインテット)第二位であり国立タレミア魔術学園学園長ゼルベルン・アルファは現在、『星極の術魔祭』予選にて他学園に出張中である。この当時ゼルベルンは転送用魔術陣はあるものの自分の生徒はこの件に何も関与していなかったため、彼女に連絡しようにも手段が無かった。


「静粛に!! 今はそのようなことをしている場合では無い!! それで、奴の弱点はわかっているのか?」

「はい。奴は物理攻撃に弱く。かすりもすれば滅びることがわかっています。ただ……」

「良いから続けなさい」


 大きく息を吸い込み、吐いた。そして告げる。


「まず奴の周りには最高位魔術さえ防ぐ高位魔術《千差万別の防壁(オールオブ・バリア)》が張られています」

「それの何がいけないのだ? 我々には儀式魔術があるだろ?」


 儀式魔術は数十人の魔術師が同時に詠唱し、一つの物を魔術として形成する魔術。

 通常の基本魔術を同時複数詠唱するのとは違い、具現する物は必ず一つで交わり、その威力は魔術師の極致の一つ最高位魔術よりはるかに上回る。

 デメリットとしてこの儀式魔術に参加した魔術師は必ず『魔力欠乏症』にかかるということ。それは五大魔術師(クインテット)とてその条件は変わらない。


 そして側近が言い出す。


「本題はここからです。……あの未確認ゴーレム型の魔物の核には……人がいます」

「……!!」


 ひ、人を取り込むゴーレムなど聞いたことがない!!


 国王および貴族たちは騒然とする。

 魔物は通常を人を喰らい力をつける。だが、ゴーレムなどの型が決まっている魔物が人を。それも取り込むなどどの文献にも存在しない。


 ジークは覚悟を決めなければならない。

 その魔物が取り込んでいる者がもし、重役な貴族だとしたらそれは国際問題になりかねない。


 その重役な貴族が行方不明になったなんて報告は未だには無いが、もしそれがあるとすれば―――これは誰かに生み出されたテロになる。


「さあ、ご決断を。陛下」

「…………」


 確かに国際問題になる。だが、このタレミア王国には世界最強がいる。

 世界各国が束となり統一する世界連合からしばらく同盟を離れても問題ない。

 答えは最初から決まっている。


「皆の者、決断を言い渡す!! あのゴーレムを儀式魔術によってせ――――」

「おいおい、それでいいのか陛下」


 貴族は静まり返り、国王の命令をさながらも一人の魔術師が堂々と玉座の前に立つ。


「貴様! 陛下の御前であるぞ!」

「陛下の御前? 何言ってんだ? この国は滅ぶというのに」

「……!! き、貴様……!!」

「待て、早まるな」

「しかし……!!」

「俺の目の前に立つということは俺を殺すということは無いだろう。何か、交換条件があって現れたのだろう? 名を申せ」


 冷静にジークは魔術師に話す。


「私の名はグレイバル・サタン。上位魔術師だ」

「それで貴様は何用でこんな愚かな行為をしている?」

「愚か? 何言ってるんだ? そうだな単刀直入に言おう。タレミア王国国王ジーク・ランドロード・タレミア。お前に要求する。この国が惜しいのなら今すぐ第一王女を渡せ。それなら私たちは手を引こう」

「……そ、そんなのできるわけないだろう!!」


 愛娘アメリアを渡すなんてジークには到底できるわけがない。


「そうか……? お前は多くの国民を助けるために儀式魔術でアヴァロンを殺そうとしてるんだろ? なら、一緒じゃないか。渡せ! アメリアを!! お前の娘を!!」

「……!!」


 なんて二択なんだ。

 多くの民を救うためにアメリアを渡すか、それとも多くの命が失ってもなおアメリアを救うか。

 いくら国王であってもそのような決断なんて……できない!!


 ここでタレミア王国魔術師団団長アミール・タルタロスはジークの横に立ち、答える。


「陛下。姫様を連れて逃げてください。ここは我々にお任せください」

「だが……!!」

「……アメリア様はタレミア王国次代の国王です。たとえ国が滅んでも必ずアメリア様はこの国を導いてくれると、そう信じています。ですから陛下、いやジーク。逃げろ」


 その言葉はまるで昔を蘇らせるようにジークに届いた。

 かつてタレミア魔術師団の元同期である。アミールとジーク。その絆はジークに答えを導かせた。


「悪い、アミー。ここは頼んだ!!」

「任せろ。絶対に姫様を守れ!!」


 こうしてジークは玉座の間に抜け出した。

 貴族たちも国王の判断により意思を固めて魔力を込める。


 そして始まった『タレミシア革命』。

 正体不明の魔物アヴァロンは動き出す。

星★★★★★、レビュー、感想、ブックマークのほど、よろしくお願いします!!


1つでも多くの評価ポイントがあるだけで作者は泣いて大喜びします!!

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