1ー46 『タレミシア革命』①
第一章 後編 王国奪還編が始まります。
この章は前章の続きであり、ノア達一年生一学期のクライマックスとなっております。
果たして囚われたリーナをノア達は救うことができるのか……!
色んな思いが交錯し、物語は新たなステージへと向かう。
新星暦二九八二年七月二十一日
この日、タレミア王国に一人の王女が誕生した。
名はアメリア・ランドロード・タレミア。
「あなた、産まれたよ。女の子。見て。すごくかわいい」
王妃リリィ・ランドロード・タレミアが赤ん坊のアメリアを抱えて、国王ジーク・ランドロード・アメリアに見せる。
「ほんとだ。本当にかわいい。この子が俺と君の子、そして次のタレミアを紡ぐ新しい光。リリィ、ほんとうにありがとう」
この日、多くの上位魔術師と使用人が第一王女の誕生を祝福した。
「何度かわたしも立ち会ったが、この瞬間に立ち会えるのは本当に感銘を受けるよ」
そう言ったのは五大魔術師第二位でありながら国立タレミア魔術学園学園長ゼルベルン・アルファだった。
「まさか、あなたに来ていただけるとは誠に光栄なことです」
「なに、わたしはこの国に忠誠を誓ってるんだ。次世代の王を見に来てもいいだろ。お前も、赤ん坊の頃から見てきたが、いつの間にか父親になるとはな。立派に育てるんたぞ」
「言われなくても、わかっております」
「……よろしい。本当に立派になったな」
「いいえ、これは先代国王とあなたの教えがあってのものです」
「……そうか。また六年後が楽しみだな。その子が入学することを心から楽しみにしてるぞ」
そう言って、ゼルベルンはその場から立ち去った。
その朗報は国全体へと瞬く間に広まった。
こうして、タレミア王国全土は賑わいを見せた。
そして、この時には既に上位魔術師グレイバル・サタンも立ち会いにいた。
※※※※※
新星暦二九八五年八月三十日
「アミー、たかいたかいしてぇ」
城の、王都を見渡せるバルコニーでアメリアは呼んだ。
アメリアは三歳になり、立つのはもちろん、話すこともできるようになった。
「いいですよぅ。姫様、さあこちらへ」
アメリアを呼んだのはこの国の魔術師団の団長を務めるアミール・タルタロス。呼び名は「アミー」。
アミールは軽々とアメリアを天まで届くように高く上げる。
「わあぁぁぁ」
目を輝けさせながら周りを見渡すアメリア。
「姫様は本当にこれが好きでいられますね」
「だって、きれいだもん」
「何よりお喜び頂けてこのアミーも嬉しい限りです」
まるで年の離れた兄かのようにアメリアを宥めるアミール。
ここでアミールは肩を掴まれた。
「おい貴様、うちの娘に何しやがる」
その主は国王ジークであった。
「こ、これはこれは陛下……。これはですね……姫様に『たかいたかいして』と言われたもので」
「貴様が気安く娘に触ってもいいとでも?」
「では、お返しします」
ジークが鬼の形相かの如く威圧してくるものだから仕方なくアミールはアメリアをジークを返した。
「アメリア、パパでちゅよぅ。ほらたかぁい、たかあい」
ジークもまたアメリアを上げる。
「ぷすぅ」
だが、ジークの「たかいたかい」はどうやら気に入らなかったらしい。
それもそのはず。
ジークはジークで身長百八十センチメートルぐらいの身長はあるのだが、アミールの身長はそれよりも巨漢。
身長二メートルの高さともなると次元が違ってくる。
ジークはアミールを預け膝から崩れ落ちた。
「な、何故だ。娘よ……。そんなに俺の事が嫌いなのか」
「そういうわけじゃ無いと思いますよ……」
「黙らっしゃい! 平民風情が!! 王に対してどの口聞いとるんじゃ!! くそ……。くそぉう………!! 娘を嫌われてるならもういい!! 死んでやる!!」
そう言ってバルコニーの柵を越えようとする。
普段は差別発言せず的確な判断と実行、威厳のある国王なのだが……。
「それは困ります、陛下! あなたがここで死んだら誰がここを統治するのですか!」
「ええい! 国の事なんかどうでもいい! 俺は今、死にたいんじゃい! 離さんかい!」
「そんなことできるわけないじゃないですか!」
「落ち着いてください!」
「落ち着いてられっか、こんなもん!」
娘のことになると、こうなる。
ジークの娘に対する溺愛度はまさに異常だ。
それは産まれたての頃、赤ちゃんはミルク欲しさに泣き、夜も眠れないような状況を一般の母親は最初の試練として与えられるが、ジークはアメリアを泣かせまいと仕事をほったらかしにしてまで毎度ミルクを与えにいったぐらいである。(さすがに外交で出かける時は遠いので仕事をほっらかしになんてしていない)
ともあれジークはやばい状況にある。
アミールは呆れて問いただす。
「それで本当は何しに来たんですか、陛下?」
ジークの足が止まる。
「あ、ああ。そうだな。すっかり忘れていた」
「普通、忘れますか?」
「ごほん。今日はアメリアに用があって来たんだ」
「三歳でしょ。魔力測定ですよね」
「ああ」
そう言ってジークはアメリアを抱える。
タレミア王国の貴族は三歳になると一度魔力測定をしなくてはならない。
「今から城にある測定できる水晶の場に行く。アミール、本当は行かせたくないがこれも仕事だ。お前の同行を許可する」
「わかりました」
ジークの本音がだだ漏れなのもさながら、今からアメリアの潜在能力を確かめる。
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