1ー44 一件落着
「ごわああああああああああああああああああああ!!」
奴が遠吠えを上げる。
なんだ? 何が起きようとしてるんだ?
すると結界内に強い地響きが襲う。
「マジかよ」
ルークの結界魔術は破られた。
再び奴は地上へと解き放たれる。
それにしても地響きが止まない。
オレでさえ立っているのがやっとだ。
「これが奴の天性魔術……いや天性魔術・解放か」
天性魔術を使う魔術師の中でもごく稀の魔術師にしか出現しない極致、天性魔術・解放。
その力は天文学的な確率でしか会得できず、発現した魔術師ですらなぜ会得できたのかわからない。
ただ一説によると自分の深淵の底を見ることで発現するという。
奴の天性魔術は恐らく地系。結界を破ったことからその魔術は天性魔術・解放であると言えるだろう。
高位魔術《天翔の雷》。
ピンポイントでその雷は落とされた。その落とされた先は……。
「ルーク……!!」
「がっ……!!」
ルークに直接当たった。
くそ。やられた。
ルークが居なかったら救うにも救えないじゃないか。
……殺すか。
幸い、避難は完了している。
「光の剣術“【秘剣】魔術返し”」
地系魔術の中で地震などの周りに影響を及ぼす魔術を敵に跳ね返すのは無理だが、相殺する事自体は可能だ。
地響きが一瞬で鳴り止む。
「光の剣術“【宝刀】煌めき”」
再び奴の間合いに入る。
振り切った一閃は奴の胸部を真っ二つに斬り伏せた。
その矢先にオレに天から高位魔術《断崖の業火》がオレに当たる。が、オレに魔術なんて効かない。
そのオレに降り注いだ火球はオレの頭部当たった瞬間に真っ二つに分かれて地上に落ちて爆発した。
「この程度の攻撃は見切れるよな、ゴーレム」
やはりな。
高位魔術《蜃気楼》で奴はまた身代わりを作って既にオレの背後を取っていた。
ここで奴はその巨体に見合わない動きを見せる。
地の格闘術“【剛拳】貫き”。
嘘だろ。
魔物が六大武術を使うなんて聞いたことが無い。
なるほどな。
お前は取り込んだ人間を媒体に意志を持てるようになったのか。
その地の格闘術もその人間の物なんだろ?
そんな甘っちょろい武術なんてオレに効くわけないだろ。
「……!!」
「お前の敗因は、オレの間合いに入ったことだ。魔術が効かないからといって魔術特化のお前がオレに物理攻撃で勝てるわけが無いだろ?」
奴の一撃に対してオレは反撃した。
光の剣術“【宝刀】煌めき”。
奴の方に正面を持っていた矢先に振るったその手刀に奴は体を半壊させた。
ルークの言う通り、一度でも物理攻撃を受けるとその反動で奴の巨体は崩壊した。
殺すと決めたオレに情けは無い。
初めて人間を殺したが、仕方ない。オレは救える人間を救うだけだ。
その時、崩壊する巨体の胸部から私立タレミア魔術学園高等部の制服を着た女性がルークの方向に引き寄せられる。
高位魔術《焦点》。
「……やっぱりね。君は絶対そうすると思った」
「……お前、わざと奴の攻撃を受けたな」
オレが地上に降り立った際、ルークは女性を抱えて現れた。
「だって、そうしないと君は力出せないでしょ」
「……お前、オレが魔術が使えないの知っていたな」
「どうだろうね。ただ、君は一人の方が強いっていうのはチームシグマ戦でわかっていたから利用させて貰った」
なんだ、こいつ。
まさか実戦経験豊富なオレより戦況を読む力があるのか?
「でも、良かったよ。君を殺人者に仕立てあげなくて。これで一件落着だね、ノア君……!!」
「……そうだな」
確かにこの女性を助けられた。
でも、奴が襲いかかって来た時オレは多くの観客を救えなかった。それが気がかりになった。
「ノア君、上を見てみ」
「上……? ……!!」
ルークの言った通りに見上げると、多くの人が気絶しながらも高位魔術《千差万別の防壁》で覆われ宙に浮いていた。
「あの学園長がこの非常事態に対応してない訳無いだろ」
「はははっ……! こりゃすげぇや」
流石は五大魔術師第二位。抜かりがねえな。
「これで気は晴れたかい?」
「ああ……!!」
こうしてゴーレム襲来は幕を閉じた。
……一体、誰がこのような襲撃を行ったのか。
謎は多いが、その真相はいずれ暴かれることになる。
次回 6月16日18:21頃投稿 第一章 前編 完結
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