1ー38 ノア・ライトマン対リーナ・ラカゼット④
『おーっと! ここでリーナ選手がノア選手の魔術を跳ね返しました! これは一体、どういうことなのでしょうか!!』
観客が最高潮に盛り上がりを見せる。
「お前、何かしたな?」
リーナは答える。
「私の魔眼《模倣眼》は相手の動きを見てそのまま自分の動きに落とし込む魔術。これであんたの動きを自分の動きに落とし込んだ。だから、あんたの剣術は効かないよ」
《模倣眼》なんて魔眼なんて聞いたことない。
ましてやどの魔導書にも《模倣眼》は載っていなかった。
天性魔術《魔眼》全ての魔眼を持っている。
そのことを聞いてオレは今まで知っていた魔眼を巡らせて戦っていたが、そうもいかなくなった。
リーナの天性魔術は新しい魔眼を作れる。
「“斬撃”」
リーナが光の剣術“【斬撃】三日月”を繰り出す。
オレはそれを容易く避けるが、頭上より雷が落とされる。
高位魔術《天翔の雷》。
オレはそれも半身で避けれたもの束の間。
《制動眼》で体が動かなくなった。
リーナめ。
お前はどれだけ魔術が多彩なんだ。
膨大な魔力に多彩な魔術。それに地の格闘術で至近距離のカバーをしつつ天性魔術でたまに魔眼を作りつつ相手に対応する。
断言しよう。
リーナは五大魔術師になれる資質を持っている……!!
「もう、これであんたも何もできないでしょ」
動けない。
これで詰んだか。いや、まだ――――
「止めを刺しに来てもいいぞ。殺す気で来い」
「殺しはしないよ。ただ、多少痛いかもね」
リーナは詠唱を始める。
「《生点》と《死点》が締結する。
万物の陽光。天目指す温厚の桔花。
その花は皇后と真っ直ぐに咲き続き、
その花は暗黒に満ちた世界でも尚、前を向く。
そう、我が魔術は希望にして最強。
故に、いかなる悪をも打ち払う希望の花。
さあ、ここにその花を咲かせるとしよう。
太陽に愛でられたその花を……!
――――最高位魔術『向日葵』……!」
オレを視界に抑えながら種子から光線が放たれた。
被弾。オレの姿が見る影もなく消える。
最高位魔術は《死点》による制限より、絶大な効果を発揮する魔術。
特に攻撃魔術はそのどれもが死に直結する魔術ばかり。
リーナはオレがこの魔術で死なないと踏まえて出してきやがった。
ただオレにはそれすらも通じない。
「……!!」
光線より視界を外した瞬間に、正面から突進する。
魔眼は全体を視界に写して初めて効果を発揮する魔術。
それは対象にもよるがオレの身体全てを動けなくする《制動眼》なら少し視界から光線がかぶさった時点で効力を失う。
その隙を利用して魔術が来る前にオレは前に出た。
最高位魔術《向日葵》はまばゆい光を催しているからな。
オレが正面からくること自体、知覚してからじゃ遅いぞ……!
「“煌めき”」
これでお前は詰みだ、リーナ。
この試合、オレが貰う。
いくら実力で勝っているからといっても、油断は禁物だ。
手刀を振った瞬間、オレはリーナの底力を目にする。
※※※※※
私は両親を失った。
それは幼い時に起きた十年前の『タレミシア革命』に巻き込まれた時だった。
怖い。怖い。熱い。熱い。怖い。怖い。嫌だ。助けて。誰か。
鮮明には覚えていないけど、その感情だけは記憶に残っている。
決して消えない絶望と恐怖が私の心のどこかにあって、今でもそれは夢に出てくる。
私は強くなると決心した。
この気持ちがいつか克服できるように。
誰も失わないように。
でも、なんでこの感情は私からいなくならないのだろう。
私立タレミア魔術学園でずっと首席を維持していても消えない。晴れてくれない。
私以外、弱いから。本当にそうなの?
だったら、私は『星極の術魔祭』に出る。
あそこは学年関係なしに同世代での世界一を決める大会。
そこで、私は優勝する。そう誓った。
なのに高等部に入って私より強い人が現れた。
強かった。しかも手加減されて私は『決闘』で負けたんだ。
やっと、強い人に会えた。
ノア・ライトマン。私はあなたを超えることで真の強さを手にする。
だから、この試合は終わらせない。
私が勝つまでは決して諦めない……!!
※※※※※
振った手刀が動けなくなった。
これは《制動眼》。それも部分的に止めたか……!!
でもそうしたらオレの手刀の方に目を向けなければならない。
オレにはまだ片腕がある。
そこにオレは止めを刺し……!!
リーナは既にオレの方を見て構える。
「《身体強化・二十》……!!」
リーナはオレの腹部に身体強化全開の地の格闘術“【剛拳】貫き”を入れた。
「がはッ……!!」
思わず吐血をしてしまった。
マジかよ。
さっき《制動眼》をしたのはオレの攻撃のリズムをワンテンポをずらすため。
オレが少し動揺した隙を狙って攻撃を入れやがった……!
オレは突然の攻撃に腹に力を入れなかったせいで思わず悶絶してしまった。
「……私はまだ負けない。負けないんだから……!!」
リーナは腕に治癒魔術を施しながら宣言する。
オレだって同じさ。
オレは腹を抱えながら起き上がる。
「……そうか。だったらオレもここで倒れるわけもいかないなぁ。お前を倒すのはオレだ。さあ、全力でかかってこい!! リーナ!! オレにお前の全力を見せてみろ!!」
リーナは強い。あいつは努力家でいつもオレを打倒しようといつも精進している。
だったらその覚悟、最後まで見届けようじゃないか。
両者、一歩も引かず均衡する試合。
これぞオレが私立タレミア魔術学園に来た意味。
「さあ、最終ラウンドを始めよう」
この試合はきっと『星極の術魔祭』一年生予選史上、最高潮の盛り上がりを見せる。
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