1-37 ノア・ライトマン対リーナ・ラカゼット③
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『どういうことでしょうか? 確かにリーナ選手の《制動眼》が決まってノア選手は動けないはずです。しかし、ノア選手は確かに動けています。これは一体……』
考えられることはただ一つ。
観戦しているルークがアリア、エミリーに答えを話す。
「《制動眼》は注ぐ魔力が最小限にしてしまうとたまに相手の身体能力がその拘束を上回って動けることがある。
ノア君の身体能力は身体強化系の天性魔術を発動している選手と同等の身体能力を持っている。だから、ノア君は動けているんじゃないのかな?」
だが、ここで疑問が残る。
「でも、リーナちゃんは手加減していないと思うんだけどな」
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一歩ずつリーナの方に向いて歩く。
「な、なんで動けてるの? 私、大分魔力使ってるんだけど」
「さあな」
オレの体質、いやここは天性魔術《零》と言っておこう。
オレには魔術が効かない。
だが、リーナの魔術はそのオレの天性魔術をほぼ無視して効力を発揮する。
それは入学式の時に言ったリーナの台詞から読み取れる。
オレの天性魔術とリーナの天性魔術の矛盾が混ざり合い、オレは少しだが動けるようになっている。
「さあどうする、リーナ? オレはこの状態でも動ける。それにお前はかなりの時間、瞬きしてない。なら、オレはそこに勝機がある……!!」
光の剣術“【斬撃】三日月”が連発して飛ぶ。
ただ、リーナには撃たない。これは瞬きさせるための囮である。
それにリーナも女の子だ。あまり傷はつけたくない。
「卑怯な手ね。だったら、私も考えを変えなきゃね」
リーナが瞬きをした。
オレは一瞬でリーナまで間合いを詰める。
取った。
「“煌めき”」
オレは手刀を振り切……って流石にオレの考えてることはわかってるか。
高位魔術《蜃気楼》。
リーナの身代わりが消えて、オレの背後を取っていた。
「高位魔術《豪炎の咆哮》」
リーナの莫大な魔力量から放たれる炎は必ず相手を逃がさないようマグマに飲み込まれるか如くオレの周囲を囲う。
一般の魔術師ならこれで詰む。
だが、オレは一流の魔術師だ。その程度では倒せるほど甘くないぞ。
光の剣術“【秘剣】魔術返し”。
正面からくる魔術を弾き返し、その炎に空洞を開ける。
リーナはその跳ね返った炎を《消滅眼》で炎を消した。
「……!!」
既にオレはリーナの横にいる。
「“斬撃”」
リーナは咄嗟の反応で光の剣術“【秘剣】魔術返し”を避けるが、腹に少しだけ傷つけた。
「さあ、第二ラウンドだ」
『おおおおおっと……!! ここで遂に形勢が動いたあああ……!! 最初に攻撃を入れたのはノア選手……!! 先程《制動眼》で動きが鈍ったものの、そこから激しい攻防の末、見事に一撃が入りました!!』
観客は盛大に熱狂する。
「ねえ」
「なんだよ」
「あんた。女の子、それも彼女にそんなことしていいと思ってるの?」
「確かに」
その瞬間、中位魔術《礫地の剣》が目の前を通る。
これは単なる目眩し。
背後よりリーナは《制動眼》でオレの動きを止める。
そして、中位魔術《雷の一閃》が飛ぶ。
これにより、オレは完全に敗北が確定した。
――――とでも思ったか?
オレは《雷の一閃》が飛んでくる方向にすかさず振り返り反撃する。
「“魔術返し”」
光の剣術“【秘剣】魔術返し”によって凄まじく高速に移動する稲妻が反射してリーナに返って来る。
衝撃による煙幕が激しく舞う。
煙幕が止む頃、高位魔術《千差万別の防壁》がリーナを包んでいた。
「お前、すごいな」
「何が?」
「オレのカウンター狙いの魔術を防ぐなんてな」
「あんたが考えそうなことなんて大体予想がつく」
「そっか……。これならどうする……!!」
絶え間なく襲い来る魔力の嵐。
その斬撃は結界魔術《疾走する草原》にて起こり続ける強風よりも遥かに凌駕し、無作為に斬り続ける。
「“斬撃・無限”」
オレが光の剣術“【斬撃】三日月”を何も考えずただただリーナに向けて飛ばし続けることで斬撃を量産し続ける。
これでリーナの《消滅眼》は使い物にならなくなった。
《消滅眼》は視界に入る全ての魔力攻撃を打ち消すが、それは視界のみであってそれ以上の魔力攻撃は打ち消せない。つまり、斬撃を飛ばし続けていけばいずれ視界外の斬撃は届くということだ。
そして、《未来眼》も同様、絶え間なく来る斬撃にリーナは対応しうるのか。
さあ、どうする?
「一つ、忠告するよ。その斬撃はもう見切った」
オレの頬になにかが掠めていった。
一体、何が飛んできた?
リーナは中位魔術《陣風の嘶ぎ》を展開し、オレの斬撃を打ち返すのが見えた。
これは――――
「“魔術返し”」
まさか……。
オレの剣術を模倣したのか……!
試合はまだ終わらない。
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