1ー36 ノア・ライトマン対リーナ・ラカゼット②
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オレはリーナと対戦する前、ある制限を自分で設けた。
それはリーナに攻撃する威力を気絶程度に抑えるというもの。
本気で攻撃したら殺しかけてしまうのでそれだけを避けること。
逆に言えばそれ以外は常に本気を出す。
地の格闘術も、はたまた光の剣術も全て使う。
それがリーナに対する敬意であり、納得のいく戦いにすることになる。
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先に動いたのはリーナだった。
「動くな」
リーナの《制動眼》。オレの動きを止める。
だが、その眼はすでに攻略済みだ。
「魔眼は確かに発動に対する予備動作が全く無いから大体の魔術師はその目に引っかかる。でも、魔眼の発動を予測できれば避けることはできる」
「……!!」
魔眼の発動前にオレはリーナの背後まで忍ぶことに成功。
「“煌めき”」
一瞬の一振りで爆発的な威力を放つ光の剣術“【宝刀】煌めき”がリーナを襲う。
高位魔術《蜃気楼》。
リーナは間一髪でオレの剣術を見切って自分の身代わりを作り、無傷でその場を凌ぐ。
「……《未来眼》か」
「うぅうん、私の勘。とっさに来るもんだから」
一瞬の判断で高位魔術を発動させるとはな。
「さすがだな」
「あんたには言われたくない。私も《制動眼》を見切られて怖かったんだから」
「でも、まだ試合は始まったばかり。まだくたばるなよ?」
「それはこっちのセリフ。せいぜいあんたの負け顔を見るのが楽しみだよ」
「……なら、これはどうかな」
光の剣術“【斬撃】三日月”。
オレは白羽の刃をリーナに向けて放つ。
さあ、防御魔術か。それともかわすか。
リーナの選択はそのどちらでもなかった。
「……!!」
リーナは走り出し、《消滅眼》でオレの斬撃を消した。
《消滅眼》は視界に捉えたあらゆる魔力攻撃を一時的に無効化する魔眼。
そして、光の剣術“【斬撃】三日月”は本来自身の魔力を刃に携え放たれる剣術。
オレは本来この剣術は使えないが、大気中の魔力の流れを捉えることで放つことができている。
リーナがオレの間合いに入ってきた。
「地の格闘術“【剛拳】貫き”……!!」
リーナの拳がオレの溝に入れてくる。ことなくオレはその拳をかわす。
かわしたは良いが、相手はリーナだ。必ず何か来る!!
オレはガードの姿勢で次の攻撃に備え――――
《炎上眼》。
特定の対象を燃やすことできる魔眼。魔力を込めれば込めるほどにその火力は高まり、人を殺すことも容易な魔眼だ。
この炎の威力は確実にオレを殺しに来ている。
だからあえてリーナは《疾走する草原》で無限に広がる草花を燃やしてオレからリーナに対する視界を失わせた。
天性魔術には必ず《死点》による制限が存在する。
その中でも魔眼には二つの共通する制限がある。
一つは視界にあるものでしかその効力を発揮しないこと。オレ全体に魔術を施したいのならオレの姿全てを自分の目で納めなければならない。
もう一つは一度瞼を閉じるとその瞬間にのみ効力が消える。瞬きした瞬間、自分の視界から一時的に消えてしまうため、魔眼は基本、持続時間が安定しない。
そう、《炎上眼》で燃え盛っているのはあくまでリーナが見えている場所のみ。
その炎の裏をかいてリーナの背後に侵入すれば簡単に攻略できる。
残念だったな。リーナ。
オレがその炎を切って視界で捉えた瞬間に《制動眼》でオレの動きを止めようとしたけど無駄だ。オレがどれだけ魔導書を読んできたか。
大体の《魔眼》は熟知している。
オレは気配を消してリーナに接近する。
リーナはオレの方に見向きもしないで《炎上眼》を発動し続ける。
リーナには悪いけど、勝たせてもらう。
光の剣術“【斬撃】三日――――”
「動くな」
リーナは咄嗟にオレの方に向き《制動眼》が発動。
斬撃を飛ばす前にオレはリーナに動きを止められた。
嘘だろ。オレの気配は完全に消していたはずだ。かく言うフレイでも気づかないぐらいには気配を消していたはずだ。
「驚いた? あんたの行動なんて見なくてもわかるんだよ」
高位魔術《魔力察知》は広範囲で魔力の流れを常に察知する魔術。
なるほどな。
オレが魔力を持たないことを逆に利用してオレの動きを捉えたな?
その魔術だとオレは魔力の無い空間が動いてるのと変わらないからな。
すごいな。
魔眼の豊富さといい、オレの体質の逆利用といい、以前とは比べ物にならないほど、リーナは明らかに強くなっている。
でもごめんな。お前の策略はまだオレには響かないんだよ
「……!!」
光の剣術“【斬撃】三日月”。
振るったのはオレ。リーナは間一髪でよけ、一歩引く。
オレは《制動眼》で止められているにもかかわらず“斬撃”を繰り出した。
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