1ー31 魔力量
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リーナの天性魔術《魔眼》は全ての魔眼を持っている。
それは即ち、目を通してならなんでもありの魔術が使えるのと同じになる。
そして《制動眼》は相手の動きを止める魔眼。口も動かせない。これには如何なる強大な魔力を持つ者が相手でも、一度目に写ったなら効果を発揮する強力な魔眼である。
そして、あいつの目はおそらくオレにも効果がある。
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『これはリーナ選手の《制動眼》でフェルト選手がびくりとも動かなくなりました! 絶体絶命です!!』
フェルトは何もすることができなかった。
魔術はイメージのみでも具現化することはできる。これを『無詠唱魔術』と言うのだが、大体の魔術師はそれに対して無意識に儀式として動いてしまっていることが多い。
故にこの時点でリーナは既にこの試合の主導権を手に入れた。
「ごめんね。私、あんたはただの踏み台にしか思ってないから。だから……もう終わらせるね」
中位魔術《雷の一閃》。
リーナから放たれた稲妻の矢は、フェルに向かって一直線に走る。
これがリーナ・ラカゼット。
私立タレミア魔術学園初等部、中等部全ての学年で常に首席であった彼女に勝てる者はそう多くない。
だが、フェルトも決して負けてはいない。
高位魔術《千差万別の防壁》がフェルトを覆う。
「……!!」
リーナは少し驚いた表情を見せる。
無詠唱、それも宣言無しでの魔術の展開はイメージ構築にかなり左右される。
だが、フェルトのしたことは明らかに完璧な高位魔術《千差万別の防壁》であった。
これは――――
「あんた、自動的に魔術を発動できるように細工したのね。魔術は緻密なコントロールで遅らせたりできるからね」
この強度と練度、精密さ。これはフェルトが考えたリーナ対策。
フェルトもまた内部進学生。リーナの天性魔術は既に把握済みだ。
リーナは不意に笑う。
「すごいね、あんた。そんなこと私にはできないな。だけど、あんたは少し間違えている。これをして時間を稼いだだけじゃわたしは止めれないよ。だって――――私の魔力は強大だから」
リーナから発せられた魔力はそれは途轍も無いものだった。
フェルトは絶望しきった顔が目に映る。
これに限っては仕方ないものだから。
基本、魔力量と貴族階級は相関関係にある。
階級が上がるにつれ魔力量は多くなり、王族となればそれは凄まじい魔力量を持ったものとなる。
リーナから湧き出る魔力量はその王族いや、王族のさらに二倍以上に匹敵している。
「……この予選は時間制限が無い。このまま耐久戦に持ち込んでも日が暮れるだけ。だからこの魔術で終わらせるね」
高位魔術《豪炎の咆哮》。
超高火力、膨大な魔力から放たれるそれはフェルトを書こう防壁そのものを覆った。
その魔術はまさに前回戦ったドラゴンよりもさらに威力が伴っていた。
故に高位魔術《千差万別の防壁》は破れた。
フェルトは破られたことにより炎の渦に巻き込まれた。
『直撃ぃぃぃぃ!! リーナ選手の特大魔術が決まったぁぁぁ!! これはリーナ選手の勝利か……って言ってる場合じゃない! 救護班! 今すぐいかだの用意を!』
あんな魔術を受けたんだ。ただで済むはずが無い。
『……いや、これは……』
ジュリーさんは言葉が詰まる。
「あの魔術はもうすぐ死んじゃうぐらいの魔力を出したんだよ? そんなの負けるじゃない」
炎の渦が消え、フェルトの容態が気になるところだが……彼は無傷だった。
フェルトは高位魔術《千差万別の防壁》に包まれていた。
これはリーナの《二重魔術》か。
確かにフェルトは高位魔術《千差万別の防壁》を持っている。だけど、先程破られた後に続けて魔術を出してもリーナの魔力の前に為す術は無かった。
「どう? もう一度する?」
リーナは小悪魔のような笑みでフェルトに言う。
「……辞めておくよ。勝ち目が無いのはわかったから」
『決まったぁぁぁ! 勝者リーナ選手! 魔眼と圧倒的な魔力量で相手に何もさせず勝利しました!!』
多くの生徒がリーナにエールを送った。特にリーナファンからの声援がやばい。
圧巻の勝利、リーナは拳を握り締め勝利を噛み締めた。
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