1-17 対チームシグマ②
目を逸らして見るとあいつら四人が倒れているのが見える。
だが、こんな短時間ですぐに倒されるとは思えない。
よく見たら無傷だ。
「……高位魔術《深淵の昏睡》か。あいつらを直ぐに眠らせたな? さっきの魔術はお前らが仕組んだカモフラージュって訳か」
「ご名答! さすが、首席ノア・ライトマン……! だが、それがわかったところで幾ら学年最強と言えどこの人数はキツイだろう?」
四人を倒すのは簡単だ。
でも、オレは現状旗を守りながら戦わないといけない。なら、どうするか。
「それはどうかな……!」
オレは手刀に手の形を変えて構える。
すると、リーダー格の男選手がニヤリと笑う。
この時、オレは気づいて構えるのを止める。
「これがお前の天性魔術か」
「おっ……気づくのが早いねえ。そう。これが俺の天性魔術《万天の揶揄》。俺が視認するもの全ての事象がズレる。つまり、お前が先程、やろうとした一気に倒すのは無理に等しい」
へぇぇぇぇ。
こいつの天性魔術、オレの行動が読み取れるのか。
いや、それは《未来眼》でオレの行動を先に見たんだろ。
どうやら事象のズレとやらでオレの体質もズレるらしい。厄介だな。
これじゃオレは何もできない……。
――――とでも思ったか?
「くっ……!」
「がはっ……!」
「!!」
オレは少し指を振って同時に光の剣術“【斬撃】三日月”で同時に二人を致命傷にならないぐらいほどの傷を負わせた。
「なに……!?」
「なに驚いてんだよ。お前の天性魔術はズレを生じさせるんだろ? だったらそのズレを読めばいいだけだろ」
「……くっ。こいつマジか……」
戦いが均衡する中、観客席が熱狂させた。
『おーっと!! ここでノア・ライトマン選手の天性魔術《斬撃》が炸裂……!! 一気に二人を倒しました!! これは凄い!!』
入学試験の前に私立タレミア魔術学園では必ず自分の天性魔術を言わなければならない。
そこでオレは天性魔術《斬撃》と言ってその場を凌いだ。
『しかし、このノア・ライトマン選手の天性魔術の《死点》が基本魔術が使えないというのはあまりに不公平な制限だと思うんですが、センリ先生はどう思います?』
『天性魔術の《死点》は決してその天性魔術に見合う制限を持つとは限りません。その逆もまた有り得ます。なので、ライトマン選手はその《死点》で感じる不公平を感じさせないくらい人一倍努力して彼は今、首席としてこの学園にいるんだと思います』
『なるほどぉ。これはきっといい試合になりますよ……!』
さて、ここからどうするか.。
オレのチームはオレ一人だけ。対して相手はまだ二人いる。
いくら実力差があるとはいえ連携されて想定外なことが来るかもしれない。
オレから攻撃するのは不味い。
ここは一旦、様子見とい――――
この瞬間、中位魔術《鷲の旋風》が目前まで来た。
オレはそれを手刀で上に弾く。
「くそっ……。卑怯な手を使いやが――――」
背後より一人の選手がオレに攻めて来る。
「《身体強化・五》……!!」
相手は身体強化の魔術を付与して殴りかかってくる。
オレはそのまま手刀で相手の首を狙って振る。
だが、その攻撃は少しかすめる程度で避けられた。
身体強化による動体視力の強化。そして、研鑽された体術がオレの攻撃をかわした。
相手はかわした後、すぐに顔に殴りかかってくる。
身体強化された攻撃をそのまま食らい、同時に受け止めてやった。
「……!!」
オレはすぐに相手の腹を殴り、半歩引かせた。が、倒れない。
すると、七時方向から光系魔術が来る。
オレはそれを首をかしげて回避した。
なるほど。旗ではなくオレ狙いに焦点を当ててきたか……!!
「中位魔術《雷の一閃》」
リーダー格の選手による連射による猛攻。それに――――
「地の格闘術“【剛健】貫き”……!!」
身体強化による体術を使う選手によってオレの行く手を阻んでいく。
オレはその拳を半歩引いて避ける。
ここで《雷の一閃》が炸裂する。
避けたところに体術を使う選手が真正面から突っこんでくる。
「地の格闘術“【剛健】貫き”……!!」
オレは首をかしげて蹴りを一発入れた。
「うごっ……!」
悶絶する中、リーダー格の選手が天より何かを降らせる。
「食らえ……!! 高位魔術《天翔の雷》……!!」
高位魔術《天翔の雷》は単純に雷を降らせる魔術。
この魔術は単純がゆえに魔力を込めれば込めるほどその威力は拡大する。
そしてこの威力は間違いなくオレを一撃で落とすぐらいはある。
オレは難なく避けた。
この程度で勝てると思うなよ……?
この時、自陣の旗に近づく何者かが着実に忍びよせていた。
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