1-13 誕生日
※※※※※
「あれ?」
「エミリー、お前何してたんだ?」
寮に戻る途中、エミリーとばったり遭遇した。
エミリーと遭遇後、一緒に歩いて寮に向かう
「それはこっちのセリフだよ。何してたの?」
「オレは……リーナとデートしてたんだよ」
リーナはにやけ顔でこっちを見てくる。
「へええぇぇ」
「……なんだよ?」
「別に! ノアも隅に置けないなって」
うざ。
「お前こそ何してたんだよ」
「私……? 私はアリアちゃんとデ・エ・ト♡だよ、お兄ちゃん!」
こいつ、オレをいじるためにわざと言葉を変えたな。それに普段呼ばない「お兄ちゃん」とか呑気に言いやがって。
うざいを超えて苛立ってきたぞ。
「でも可笑しいな……? 肝心のリーナちゃんが見当たらないんだけど……?」
「……リーナは先に寮に帰ったぞ」
すると、エミリーは手を覆い、言った。
「まさか……!! 破局……!!」
なんでそんな嬉しそうなんだよ。
「あぁあ。とうとうやっちゃったか」
「なにが『あぁあ』だ。それにリーナとはまだ――――」
「でも、思った通り。お兄ちゃん、エスコートできなさそうだし」
「なにが『思った通り』だ。別にオレはまだリーナと――――」
「仕方ない!! ここは妹であるこの私が人肌脱ごうじゃないか!!」
「良いからボクの話を聞いてください」
「――――で、結局どうだったの?」
やっと、オレの話に耳を傾けたか。
「実は――――」
オレは今日あったことを話した。
ケルベロスが突然現れたこと。
ケルベロスが現れてリーナが情緒不安定になったこと。
そして、ケルベロスを討伐したこと。
その後にリーナを迎えに教会に行ったときにはすでにリーナが居なかったこと。
「――――リーナには絶対に自分が喚いてたことを言うなよ」
「わかってる」
エミリーは少し下を向く。
「……大変だったんだね」
「お前と別れてからたくさん魔物と戦ったからな。そうでもないよ」
「…………」
「…………」
少し沈黙で間が開く。
すると、エミリーは空を見上げた。
「ねえ」
「……なんだ?」
「今日、何の日が知ってる?」
「……? なんかあったか?」
新星歴二九九八年五月十日。
「今日は私たちの誕生日だよ」
「ああぁぁぁ」
すっかり忘れてたわ。
「今日は私たちが生まれてから十六年。そして……ノアと一度別れてから六年が経ったんだよ」
「そうだな」
「本当に、ノアは凄いよ。ライトマン家から追放されて悲しかっただろうにそれをバネにして、今じゃ学年トップ。本当に……ずっと私は悲しいまま六年経っちゃったよ」
ああ。
エミリーはただ一人ライトマンで唯一オレが追放されたことに泣いてたんだったな。
「そんなことないだろ」
「え……?」
「内部進学だろうが外部受験だろうが、タレミア魔術学園高等部の入学試験は混同で試験が行われる。かなりの人数が内部進学しようとして失敗して落ちたんだろ? だったら、お前は成長してる。こんなすごい素質を持つ人間しか入れないタレミア魔術学園高等部にお前は入れたんだ。それだけでもすごいだろ」
「……なんか」
「……なんか?」
「ノアに言われるとなんかムカつく」
なんでだよ。
「……でも、ありがと。おかげで今日は良い誕生日になりそう……!」
「……そうだな」
エミリーは一歩オレの先を行って満面な笑顔でオレに振り向いた。
エミリーは軽い足取りで寮に向かう。
おっとっと、忘れてたわ。
「そう言えば、お前こそなんでアリアと一緒に居ないんだ?」
「あああ。アリアちゃんはなんか用事を思い出したとか言って先に寮に戻っていったよ」
「お前も破局したんじゃねえのか? なんかしたんだろ?」
「してないしてなしてないしてない!! 至って私たちは親友なんです!!」
おいおい。いつお前はアリアと親友になったんだ?
アリアはお前のこと本当に親友だと思ってんのか?
「やっと着いた。やっぱここの寮遠いって」
なんで『紅葉の山荘』で暮らそうと思ったの、と突っ込もうと思ったけど何かがおかしい。
もう周りは夜になっている。
リーナとアリアが帰ってきてるならとっくに明かりがついているはずだ。
なのに、明かりどころか人が住んでいるようにも感じない。
まさか――――
「オレは先に戻る!」
エミリーを置いてオレは急いで寮に戻った。
今日はなぜかケルベロスに襲われたんだ。
まさか……魔物が……!!
オレは玄関の引き戸を思いっきり引っ張った。
「おい! へ――――」
玄関に着いたと同時にクラッカーの音が鳴った!!
「「「ノア(君)!! エミリーちゃん!! お誕生日おめでとう!!」」」
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え、どゆこと?
この時、オレの頭はフリーズした。
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